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2017.1.9

他者に関心を持つということ-宮本輝の「長流の畔」を読んで

皆様、こんにちは。

レジリエンス研修講師、ポジティブ心理学コーチ、

自称、在野のアドレリアンの松岡孝敬です。

今日は1月9日(月)、三連休の最終日、皆様、いかがお過ごしでしょうか?

今日は成人式ですね。30年以上前の鹿児島で迎えた成人式を思い出します。

私が成人だった頃から読み始めた、宮本輝著「流転の海」シリーズの最新刊、

第8部「長流の畔」を、先日、家内の実家に帰省した際、読了しました。

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タイトルにある長流は、兵庫県東部を流れる円山川を指していて、

小説のクライマックスでの重要な舞台になっています。

家内の実家の近くにも円山川が流れていて、

何か因縁めいたものを感じつつ一気に読み進めました。

「流転の海」シリーズは、宮本輝のお父さん、宮本熊市氏をモデルにした、

松阪熊吾が主人公の長編小説です。

破天荒で情に厚く豪快な、いかにも明治生まれの気骨ある男、松阪熊吾の、

戦後、50歳近くになって授かった一人息子(松阪伸仁、宮本輝がモデル)

の成長を見守りつつ、一家を支えつつ、

戦前、戦中は、事業で大成功して羽振りの良かった熊吾が、

戦後は、信じていた友人や仕事仲間に裏切られ、没落していく物語です。

現在、雑誌「新潮」に連載されている第9部「野の春」でシリーズは完結します。

大学時代からのテルニストとしては、

「流転の海」シリーズが終わるのは寂しいと思いつつ、

テルニストは誰もが知っているお父さんの哀しい最期を思うと、

早く小説は完結してほしいという気持ちがない交ぜになっています。

しかし、レジリエンスの強い男ですね~。松阪熊吾。

起業家としての才能はありながら、生来の人情の厚さから、人を信じやすく、

自分を慕う後輩や同郷人、周囲の人々には、

信じられないくらいの気配り、心配り、貢献をします。

それこそ、アドラーが警告する“自己犠牲を払う他者貢献”の典型のような…。

そして自分の可愛がった後輩から裏切られても、それを赦してしまうような寛容さもある。

宮本輝は、かつてお父さんの宮本熊市氏から、

哀しい別れというものを味わったことのない人間とは、おつきあいしたくない

ということを言われたそうです。「別れの船」という短編集で紹介してます。

若い頃、私は、この意味がよくわかりませんでした。

アドラー心理学やポジティブ心理学を学びつつある今は、

なんとなく意味がわかるような気がしてきました。

哀しい別れ」とは、対人関係を交わさなければまず起こりえない。

人は一人では絶対生きていけない。何らかの対人関係は必ず付きまとう。

哀しい別れ」とは、自己を否定せず肯定せず、ありのままに受け入れ、

かつ他者に強い関心を抱いた人だけに起こりうる感情ではないかと。

そう考えるようになりました。

この世は、別れに満ちています(by宮本輝)。私もいろいろな別れを経験してきました。

父との死別、敬愛する師との死別、予想だにしなかった親友との死別、

最愛の人との別れ、意見の相違による盟友との別れ…。

ただそのような別れも、自分を受容し、他者に関心を持たなければ、

つまり、幸福でなければ起こりえない。

哀しい別れ」を経験するということは、

その人が他者に関心を持ち、心配りできる幸福な人であることの証左だと思います。

宮本輝のお父さんは、本能的にそれを理解していたので、

あのような言葉を伝えたのでしょう。

今年は、「流転の海」第9部「野の春」の刊行を心待ちにすることにします。

かつて、大学時代に交際していた女性(そして哀しく別れた女性)から、当時、

『「流転の海」の松阪熊吾って、松岡くんに似ているね』

と言われたことがあります。

喜んでよいのか、悲しんでよいのか、そんな記憶が蘇ってきた。

まさか、それが原因で…(笑)。

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