ちょっと自慢話。誕生日に免じてお許しを。
いや自慢話に結局はなっていないかもしれません。私も集団心理の罠にかかり,外国人観光客に不快な思いをさせてしまったかもしれなかったので。
6月27日(土),翌日の名古屋での講座受講を控え,前日入りするためお昼頃に東京から発車するのぞみ指定車両に乗り込んだときの出来事です。新横浜を過ぎてまどろんでいると,車両内から「Do you speak English?」とネイティブな英語が聞こえてきました。どうも欧米から旅行に来た初老の男性が,英語を話す日本人を探しているようでした。私は英語はさほどうまく話せないし,多分,車掌か誰かがちゃんと応対するだろうと思い,再びまどろんだのでした。
それから,初老の外国人男性は,車内販売員(売り子さん)の女性に話しかけたところ,会話が通じなかったのか,さきほどよりも一層慌ていらつき,「Do you speak English?」と繰り返し座っている乗客に話しかけながら,車両を歩いていたのでした。
さすがに誰も応対しないのもまずいなあと思い,下手な英語を顧みず,「What’s wrong?」と話しかけて応対した私でした。
すると,件の男性は,安どの表情を浮かべたのち,しばらく私と会話して疑問が解決し,本来座るべき座席のある車両に向かったのでした。
聞くと,彼は,自分の切符を見せながら販売員に「この列車は名古屋駅に行くのか?」(ここからは日本語でお送りします。日本人ですので)と英語で尋ねると,販売員の女性は,「No!No!」と話したというのです。おそらく女性は,切符(自由席でした)を見て,「この切符は自由席のもので指定車両には乗れませんよ。」と言いたかったんだと想像しますが,彼にとっては,それ以前に,「この新幹線は名古屋には行かない。」と言われたと誤解し,パニックになったんでしょう。彼にとっては相当レジリエンスが試される状況だったに違いありません。不安やイライラといったネガティブ感情が渦巻き,心中穏やかではなかったでしょう。「親切で優しいと評判だったのに日本人はなんて不親切なんだ!」とか「名古屋に向かうチケットを買ったのに名古屋へ向かわないなんてどういうことだ!」なんて思い込みから様々なネガティブ感情が発生したのだろうなあと察しました。
その一方で,当初の私を含め,無関心を決め込んだ多くの乗客の心には,「誰かが応対してくれるだろう」とか「英語しゃべれないから無理だよ」といった思い込みがあったのだろうと思います。
この状態から双方が幸福な状態にするには,勇気をもって誰かが応対し,双方の立場のネガティブな思い込みを処理する必要がありました。レジリエンスを思い切り発揮した時間でした(←そんなに大層なことか?)
このときの私と外国人男性が乗っていた車両内の乗客の心理は,心理学用語で「傍観者効果」といいます。この効果は,「ある事件に対して、自分以外に傍観者がいるときに率先して行動を起こさない」集団心理の1つで,傍観者が多いほど起こる確率というか効果は高いと言われています。
傍観者効果の研究のきっかけとなった悲しい事件が,1964年にニューヨークで起こった「キティ・ジェノヴィーズ事件」です。この事件は,キティ・ジェノヴィーズさんが深夜に自宅アパート前で暴漢に襲われたとき,彼女の叫び声で近隣住民38人が事件に気づき目撃したにもかかわらず,誰一人警察に通報せず,助けにもいかず,結局暴漢はその後二度現場に戻り,彼女を殺害してしまったという痛ましい事件です。
このような傍観者効果が招く悲惨な事件を防ぐには,傍観者効果が発生しないような社会システムの構築が重要視されています。
私は,多くの市民のポジティビティが高まり,レジエンスが強化されれば,多くの人々の幸福度が増し,利他の心が浸透しますので,傍観者効果も未然に防げると思います。そんな社会をつくれるお手伝いをしたいなあと感じます。
それにしても私の英語はひどすぎる。レジリエンス資源を思い切り消耗してしまった…。TOEIC満点達成は夢のまた夢ですね(泣)。