2015.7.14
先週末,10日~12日は,幕張と東京で2つの異なるセミナーに参加しました。どちらも私の今後のビジネスにおいて大事なセミナーでとても有意義な時間を過ごしました。
1つは全米ナンバーワンのマーケティングコンサルタントが講師を務めるマーケティング戦略セミナー,200名以上が参加した大規模なセミナーでした。もう1つはレジリエンス講師が実践例を共有しあい,ネクストステップを議論するセミナー。
趣の異なる2つのセミナーですが,共通点もあります。それは,いずれも「クライアントを幸福に導く方法を学ぶこと」。
マーケティング戦略セミナーの講師を務めた超大物カリスマコンサルタントのJ氏は,「クライアントとはコンサルタントが保護すべき存在」,「マーケティングとは顧客に恋をすること」という主張をされています。レジリエンス・トレーニングもそれに通じるところがあるかなと思います。クライアントに愛情を注ぎ,ポジティビティを高めなければ,クライアントのレジリエンスを強化することは難しいなあと感じます。
クライアントに愛情を注ぎ,感謝し,恋をするように保護する。それはマーケティングもレジリエンス・トレーニングも共通するのだろうなあと痛感した3日間でした。
マーケティング戦略セミナーでは,40歳前半のコンサルタント起業準備中の方と友人になり,レジリエンス講師のセミナーでは,定年間近の方でやはりコンサルタントとして独立を志望している方と友人になりました。前者の方には,起業直後の集客について尋ねられ,いまだ集客にもがいているなりにうまくいった戦術を説明すると参考になったようです。後者の方は,私が退職直後に独立起業したエピソードを披歴すると,勇気をいただいたとのお言葉を頂戴しました。起業して5か月足らずで大した経験はないのですが,そんな経験でもいろいろな人に少しでも刺激になり,貢献できることは嬉しいですね。
そんな感慨に耽っていると,映画「シンドラーのリスト」のとある言葉を思い出しました。
「一人を救うものは世界を救う。」

これはユダヤ教の聖典タルムードの言葉です。
一人のクライアントを愛し,感謝し,幸福に導くことは,まさしく世界を救うことにつながると大仰でなく思っています。
レジリエンスもポジティビティも高まった3日間を終え,可能な限り多くの方をレジリエントに導こうと決意を新たにした私でした。そうするには自分自身のレジリエンスをさらに強化し,学び続けないと…。
2015.7.8
先日,レジリエンス講師の友人とワインを飲んでいたときのこと。
レジリエンス・トレーニングでは,ネガティブ感情を早期に解消してネガティブスパイラルから脱出することが最初のステップですが,その解消法で好ましくない方法とされているのが,アルコール,ギャンブルと言われています。
なんでアルコールはネガティブ感情の解消に好ましくないのか?むしゃくしゃしたときに気晴らしに酒を飲んだっていいんじゃないの?ぱあっと気が晴れるし…。って思っている酒飲みは多いと思います。その友人もよく質問を受けるとおっしゃってました。
アルコールもギャンブルも中毒になりやすい,依存症になりやすいからというのが理由なのですが,それだけではなく,セロトニンの分泌量が低下して,脳内のホルモンバランスが悪くなるから,結局,ネガティビティが解消されないんでしょうね。
脳内で重要な働きをしている脳内ホルモンとして,ノルアドレナリン,ドーパミン,セロトニンの3つが知られています。ノルアドレナリンはストレスを感じると多く分泌されるホルモンで,ネガティブ感情を発生させます。一方,ドーパミンは,快楽ホルモンで,過剰に分泌されると,喜びなどの快感が持続します。これら2つのホルモンに対して,セロトニンは,ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑制し,心のバランスを調整する役割を持っています。
アルコールやギャンブルは,ドーパミンの分泌を増やすので,一見,ポジティビティが高まり,ネガティブ感情の解消に有効ではないかと思わますが,ドーパミンの過剰分泌を引き起こして依存症を引き起こす原因にもなるし,ネガティブ感情が高まっているようなノルアドレナリンの分泌量が多いときにアルコールやギャンブルをすると,セロトニンのバランサーの役割をはるかに超えるドーパミンが分泌されて,ネガティビティの解消にはならないんでしょうね。セロトニンが働かない分,ネガティブ感情をかえって増幅するのではないかと思われます。
ネガティブ感情の解消法として適切といわれている,運動,呼吸,音楽,筆記などは,ドーパミンも適度に分泌量が増えるし,セロトニンも適度に作用するので,ネガティブ感情が解消されるのでしょうね。
そう考えると,セロトニンの役割は凄いなあと思いますね。清濁併せ呑んでバランスをとる憎いやつ。
アルコールやギャンブルで依存症になるメカニズムには,脳内の報酬系と呼ばれる神経系が関与します。この話は,今後のブログで書こうかなあと思います。
というわけで,酒癖の良し悪しは,セロトニンが脳内でちゃんと働いているかどうかにかかっているだろうと思います。
アルコールはネガティブ感情の解消には適切ではないですが,ポジティビティの高い状態では,ポジティブ感情を増加させる働きがあると思います。エビデンスは今のところないですが,経験上,間違いありません。
なんせ私はプロのワインホリック(ワイン中毒者)ですから…。あれっ??論理矛盾しているかな?
2015.7.2
なでしこジャパンやりましたね。女子Wカップ準決勝,一度も勝てなかったイギリスに見事勝利して決勝進出!朝からテレビにくぎ付けで観てました。
前回の2011年Wカップとは異なり,今回は全試合テレビ中継されてますね。前回とはまるで注目度が違いますね。
周囲の注目度は違いますが,チームが試合を追うごとにまとまっていって強くなっている様子は共通しています。異なるのは,優勝経験チームなので,より戦い方を知っていることと,バランスの良い自信(自己効力感),リーダーの健全な楽観性が備わっていること。自己効力感も楽観性も強力なレジリエンス資源になりうるものです。
佐々木監督の,「今は負ける気がしない」という発言から,とても強い“健全な楽観性”がうかがえます。リーダーの健全な楽観性が,チームに幸運を引き寄せたのかなあと感じています。後半は,何度もイギリスのシュートがゴールをとらえたけど,バーに当たったり,キーパーが弾いたり,ぎりぎりのところで枠を外したりしましたので。幸運を引き寄せる力が強いのも強いチームの特徴なのでしょうね。
昔は,「勝つと思うな思えば負けよ」(柔 by 美空ひばり)と言われたように,気が緩んでしまうような(油断してしまうような)“無謀な楽観性”を戒める風潮があったのですが,今は,明確なビジョンと目標達成に向けた戦略に裏付けられる“健全な楽観性”は,チームマネジメントの上では歓迎・推奨されるようです。個人や組織のレジリエンスも高まりますしね。
試合後のなでしこジャパンのようすを見ていると,自己効力感や楽観性だけでなく,ポジティビティも溢れており,非常に良い状態に見えます。組織レジリエンスもピークに達しているように思います。
その他に,キャプテン宮間のキャプテンシーの成長・成熟が目覚ましく,期待しています。キャプテンとして臨んだロンドン五輪は決勝でアメリカに惜敗し,銀メダルに終わっているので,必ず雪辱を果たしてくれるでしょう。苦渋・試練・逆境を乗り越えた人やチームは,恐ろしくレジリエンスが高く,試合中にどのようなピンチに会っても動じず再起してくれるはずです。
というわけで6日(月)の朝もテレビから離れられません。
2015.6.28
ちょっと自慢話。誕生日に免じてお許しを。
いや自慢話に結局はなっていないかもしれません。私も集団心理の罠にかかり,外国人観光客に不快な思いをさせてしまったかもしれなかったので。
6月27日(土),翌日の名古屋での講座受講を控え,前日入りするためお昼頃に東京から発車するのぞみ指定車両に乗り込んだときの出来事です。新横浜を過ぎてまどろんでいると,車両内から「Do you speak English?」とネイティブな英語が聞こえてきました。どうも欧米から旅行に来た初老の男性が,英語を話す日本人を探しているようでした。私は英語はさほどうまく話せないし,多分,車掌か誰かがちゃんと応対するだろうと思い,再びまどろんだのでした。
それから,初老の外国人男性は,車内販売員(売り子さん)の女性に話しかけたところ,会話が通じなかったのか,さきほどよりも一層慌ていらつき,「Do you speak English?」と繰り返し座っている乗客に話しかけながら,車両を歩いていたのでした。
さすがに誰も応対しないのもまずいなあと思い,下手な英語を顧みず,「What’s wrong?」と話しかけて応対した私でした。
すると,件の男性は,安どの表情を浮かべたのち,しばらく私と会話して疑問が解決し,本来座るべき座席のある車両に向かったのでした。
聞くと,彼は,自分の切符を見せながら販売員に「この列車は名古屋駅に行くのか?」(ここからは日本語でお送りします。日本人ですので)と英語で尋ねると,販売員の女性は,「No!No!」と話したというのです。おそらく女性は,切符(自由席でした)を見て,「この切符は自由席のもので指定車両には乗れませんよ。」と言いたかったんだと想像しますが,彼にとっては,それ以前に,「この新幹線は名古屋には行かない。」と言われたと誤解し,パニックになったんでしょう。彼にとっては相当レジリエンスが試される状況だったに違いありません。不安やイライラといったネガティブ感情が渦巻き,心中穏やかではなかったでしょう。「親切で優しいと評判だったのに日本人はなんて不親切なんだ!」とか「名古屋に向かうチケットを買ったのに名古屋へ向かわないなんてどういうことだ!」なんて思い込みから様々なネガティブ感情が発生したのだろうなあと察しました。
その一方で,当初の私を含め,無関心を決め込んだ多くの乗客の心には,「誰かが応対してくれるだろう」とか「英語しゃべれないから無理だよ」といった思い込みがあったのだろうと思います。
この状態から双方が幸福な状態にするには,勇気をもって誰かが応対し,双方の立場のネガティブな思い込みを処理する必要がありました。レジリエンスを思い切り発揮した時間でした(←そんなに大層なことか?)
このときの私と外国人男性が乗っていた車両内の乗客の心理は,心理学用語で「傍観者効果」といいます。この効果は,「ある事件に対して、自分以外に傍観者がいるときに率先して行動を起こさない」集団心理の1つで,傍観者が多いほど起こる確率というか効果は高いと言われています。
傍観者効果の研究のきっかけとなった悲しい事件が,1964年にニューヨークで起こった「キティ・ジェノヴィーズ事件」です。この事件は,キティ・ジェノヴィーズさんが深夜に自宅アパート前で暴漢に襲われたとき,彼女の叫び声で近隣住民38人が事件に気づき目撃したにもかかわらず,誰一人警察に通報せず,助けにもいかず,結局暴漢はその後二度現場に戻り,彼女を殺害してしまったという痛ましい事件です。
このような傍観者効果が招く悲惨な事件を防ぐには,傍観者効果が発生しないような社会システムの構築が重要視されています。
私は,多くの市民のポジティビティが高まり,レジエンスが強化されれば,多くの人々の幸福度が増し,利他の心が浸透しますので,傍観者効果も未然に防げると思います。そんな社会をつくれるお手伝いをしたいなあと感じます。
それにしても私の英語はひどすぎる。レジリエンス資源を思い切り消耗してしまった…。TOEIC満点達成は夢のまた夢ですね(泣)。
2015.6.26
韓国での中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大は収まる気配がないですね。対岸の火事ではなく,日本も十分な対策をとってほしいものです。
日本列島は四方を海で囲まれているので感染症の拡大も水際で防げるといった話は大昔の話で,今は飛行機で大量移動できる時代ですので,防疫面での日本の地政学的な利点は薄れていますからね。
明治初期の医師であり,のちに政治家でもある後藤新平は,防疫の重要性を強く感じ,その対策を誰よりも早く実行した人でした。
彼は,明治28年(1895年)の日清戦争時,帰還兵からの感染症が国内に拡大したときの危機的な状況を医師として十分に判断し,臨時陸軍検疫部事務官長として広島の似島検疫所で検疫業務に従事しています。まさに感染症を水際で防ごうとしていたのでしょう。後藤のことだから水際で防止するだけでなく,感染症が万一拡大したときのリスクマネジメントも考えていたかもしれません。
その検疫業務の行政手腕が,当時の臨時陸軍検疫部長の児玉源太郎の目に留まり,児玉が台湾総督に就任した際には,児玉は後藤を民政局長に抜擢しました。児玉と後藤の2人を中心にして,新渡戸稲造などの行政能力の高い優秀な日本人が集まり,台湾は統治されていました。このときも後藤は,仮に災害が発生したり,感染症が流行しても,都市機能が速やかに復興できるような計画に沿って統治していたようです。まさにレジリエンス的な都市づくり・組織づくりですね。
関東大震災後,後藤は帝都復興院総裁に就任し,極めて迅速に帝都復興計画を策定し,議会に大幅な復興予算を通し,東京を災害に強い都市に変革しています。後藤が生きていれば,東北大震災からの復興計画がなかなか進まない今の現状を嘆いているかもしれません。
台湾民政局長時代,ダーティーな噂もある後藤ですが,ネガティブな一面も人間なのであるのでしょう。
後藤が亡くなって80年近く経ちましたが,後藤が残した検疫レジリエンスの精神はいまだ日本に脈々と残っていると信じつつ,隣国のMERS感染拡大が収束することを願っています。