科学的に高めることができる自信=自己効力感
前回のブログで,多くの新入社員は,コミュニケーション能力不足に不安を抱いており,そのため,接客時のトラブルなどで辛い失敗経験が積み重なると,レジリエンスが弱り,心が折れ,結果,離職してしまうのではないかと記しました。多分,このパターンは外れてはいないと思います。
コミュニケーション能力を高める1つの方法は,前回のブログで記しました。日本人は(私を含め),アサーティブなコミュニケーションは苦手で浸透していないですが,新入社員には習得してほしいですね。
お客様に接したときの不安感をなくすには,接客に対する自信を深めさせるのが最も効果のある対処法だと思います。ですが,そう簡単に自信ってつきませんよね。ただでさえ慣れない初めての職場環境でナーバスになっているのに。
心理学では自信を「自己効力感」と呼びます。「自己効力感」は,科学的・心理学的に高めることが可能です。また,自信はレジリエンス資源の1つであり,自信の蓄積が個人のレジリエンスを強化します。
自己効力感を高める4つの要因
自己効力感を高めるには,4つの要因があります。以下,効果の高い順に記しましょう。
1.実体験…直接的成功体験です。これが最も効果が高い。不安感の強い新入社員には,すぐさま何らかの成功体験を経験させればよいと思います。
2.お手本・疑似成功体験(トレーニング)…お手本とは身近なロールモデルのことですが,新入社員にとって,まだ職場の雰囲気がわからない中では直ぐにロールモデルを見つけることは難しいですよね。その場合,実戦に望む前に,研修段階でリハーサル,実務を想定したトレーニング,シュミレーションを徹底的に行った方がよいと思います。そこでの失敗は許される失敗ですし,最後に疑似成功体験を経験すれば自己効力感が高まるはずですから。
3.励まし…上司・先輩・同僚・家族・友人などからの言語的激励です。ただし,効果は一時的です。
4.ムード…生理的情緒的に周囲が高揚感をつくる雰囲気づくりです。失敗をした新入社員,失敗を繰り返してなかなか成功体験を得られない新入社員に対しては,失敗を許容し,ポジティブな面を引き出すムードづくりが大切だということでしょうね。
以上のことから,新入社員に,不安感を解消するだけの自信を高めさせるには,新人研修で疑似成功体験を経験させ,現場に立ったら,周囲がポジティブなムードをつくって励まし,最終的に成功体験を数多く蓄積させることが重要ですね。
「何でそんな分厚いサポート,至りり尽くせりのケアが新入社員に必要なんだ」と怪訝に思う新入社員採用担当者,人事担当者,研修担当者がいらっしゃるのなら,離職者1人の損失コストを考えられた方がよいと思います。優秀な人材はすぐには補充できませんよ。最初から優秀な社員などそうそういません。会社に入って優秀な人材に育てて行けば良いんですから。