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2015.9.20

JAPANおめでとう!-大金星に見る組織レジリエンス

やりましたね!ラグビー日本代表!ワールドカップで歴史的な勝利!優勝候補の南アフリカを撃破!

ラグビー=日本代表、W杯で南アフリカに歴史的勝利

不覚にも,私はライブでは観てなかったのでした。まさか南アフリカに勝つとは予想していなかったからでしょうか?ラグビーファンとして情けないやら,JAPANに申し訳ないやら…

ラグビーはサッカーと違って番狂わせの極めて少ないスポーツなので,試合を見ててもJAPANの勝利は,決してフロックでも奇跡でもなく,真剣勝負での勝利ですね。南アフリカも本気で勝とうと必死でしたものね。

再放送で試合を観ていると,ポジティブ組織論的にも組織レジリエンス的にも印象的なシーンが2つありました。

1つは,後半3分と21分に,ディフェンスラインからのファーストタックルが空振ったりかわされたりして,あっさり南アフリカのトライを許したときです。

試合後,副主将のフッカー堀江選手は,そのときのプレーを振り返ってこう話しています。

「パニックにならなかった。抜かれても、それは個人が理由なのか、組織が理由なのか、組織だったらそのどこが問題なのかを冷静に話し合った。起きたことはしゃあない、と。」

以前のJAPANナショナルチーム(ラグビーに限らずすべての球技チーム)では,およそ考えられない冷静さですよね。以前のナショナルチームでは,格上のチームに得点を許してしまうと,浮足立って自滅するケースが多かったのに。

組織として冷静に状況を把握し,プレーを振り返り,過度に失敗を引きずらず,ネガティブ感情を瞬時にコントロールしている様子がうかがえます。個々のレジリエンスの強さも感じましたし,組織としてのレジリエンスもかなり強いなあと思いました。

2番目に印象深いシーンは,29-32とリードを許した状態での最終盤,相手の反則のとき,ペナルティキックを狙わずスクラムを選択したシーンです。

ペナルティキックを選択して成功しても同点にしかならないので,逆転勝利を狙ったギャンブルプレーなのかなと最初は思ったのですが,それはJAPANに対してとても失礼な見方でしたね。彼らは,ギャンブルなのではなく,確実に逆転できるという自信(確信)があったからの選択なのでしょう。

それは,名将エディ-・ジョーンズの下での過酷な猛練習に耐え抜いた実体験からくる組織全体の高い自己効力感の表れだと感じました。そのような高い自己効力感がベースになって,スクラムを選択するという「勇気」を生み出し,逆転勝利につながったと思います。

強い組織レジリエンスをもつ今のラグビーJAPANの快進撃は,まだまだ続くと思います。次回はちゃんとライブで応援しよう。

決勝トーナメントに進出すれば,是非,大好きなオールブラックスと対戦してほしいなあ。南アフリカW杯の歴史的大敗の屈辱を晴らしてほしいものです。もちろんそのときは,JAPANを応援します。

2015.9.11

メンターとのポジティビティ溢れる祝宴-レジリエンスが高まった夜

私には三人の恩師,メンターがいます。

お三人とも分野が違いますが,大学で教鞭をとられた(現在もとられている)方々です。最近,その師とお会いする機会が多く,楽しくもレジリエンスを試されるような時間を過ごさせていただいています。

昨夜は,恩師の一人と,梅田のイタリアンで食事しました。師はイタリアン,特にパスタが大好きで,私のことをグルマンとして(ワインホリックとして?)妙に評価されているので,設定したのでした。

昨夜の師はこの方です。

ヨーダ

というのはもちろん冗談ですが,私にとってはマスターヨーダのような方です。

というのも,その師は再生医学の研究分野でのパイオニアで,20年前は現在の京大の山中伸弥教授のようなスターサイエンティストでした。地方大学の教授でありながら,自らの名前を冠した再生研究プロジェクトに,通産省(現:経済産業省)から20億円の研究予算を獲得した方です。凄まじいですね。国から出されている現在のiPS研究費は100億円ですから,20年前の20億円はそれに匹敵する予算だと思います。

その師は,私をグルマンとしてだけでなく,前職の生物教科書編集者としても過分に評価されていて,それがために,私が今現在のレジリエンス講師,人材育成コンサルタントをしていることが理解できないというか,はっきり不満なようです。7月末に食事をご一緒したときは,その不満が爆発されて,困った事態になりました。

昨夜の宴は,そのやり直し,和解の目的もかねた宴でした。結果,私の今の仕事にも理解いただいて,応援するとの言葉をいただきました…。飲んだワインは,バルベーラ・ダスティとモンテプルチアーノ・アブルッツオ。ワインは偉大ですね。レジリエンス資源が思いっきり高まりました。

私の今の仕事は理解されたのですが,最後はやはり,「松岡さんには,やはり教科書会社を創ってほしいなあ~」とおっしゃっていました。困ったような,嬉しいような…。まあそんなオプションもありかなあと全てを受容しよう。

今日は,別の恩師に会いにつくばへと移動します。恩師主催のシンポジウム(という名の同門会)に出席するためです。

その師はこの方です。

ダースベーダー

もちろん冗談ですが,ダークサイドに陥っていないダースベーダーのような方です。

今宵も昨夜と同じポジティビティ溢れる夜が更ける予感がします。

2015.9.6

タルトタタンのセレンディピティ-失敗から成功に導く認知の転化

土曜日の朝の連ドラ「まれ」を観ていると,興味深いシーンがありました。

まれの子どものうちの一人,6歳の男の子,匠(たくみ)くんがまれと一緒にケーキ作りをしていたとき,失敗ばかりするので,「もうケーキ作りたくない」と言い出したので,一計を案じたまれは,お父さんである紺谷圭太を巻き込んで4名であるケーキをつくることを提案したのでした。

りんごのタルトをつくり始めた圭太は,タルト生地をのせずにリンゴを砂糖とバターで煮詰めたため焦がしてしまいます。お父さんがケーキ作りに失敗したと思い込んだ匠たちは,一瞬しょげてしまいますが,タルト生地をのせてもう一度焼くと美味しくなるかもしれないというまれのアイデアを受け,再度タルト生地をのっけてリンゴを焼くと美味しいタルトタタンが出来上がるという件でした。そして,失敗しても工夫すれば美味しいケーキができると体験した匠は,ケーキ作りの失敗に臆病になることなく,消極的になることなく,ケーキ作りにチャレンジすることになったのでした。
タルトタタン

絵に描いたようなレジリエンスキッズの育て方ですね。こんな風に育てられた子どもは,失敗を過度にナーバスに感じることなく,失敗から何かのヒントを得て成功へ導くかもしれません。

料理にも自然科学にみられるようなセレンディピティってあるんですね~。スイーツの苦手な私は,タルトタタンという洋菓子が失敗の産物とは知りませんでした。

セレンディピティとは,「偶然から幸運なものを見出す能力」とか言われています。自然科学の例でいえば,フレミングがアオカビを誤って混入させた培地から抗生物質ペニシリンが発見されたケースがあまりにも有名ですね。ノーベル化学賞を受賞した白川秀樹さんの導電性プラスチックの発見や,田中耕一さんの高分子質量分析法の発見もセレンディピティの例として知られています。

失敗したと思っても,そこから何かしら得ようとするあきらめない気持ちがセレンディピティを生み出し,ひいてはイノベーションを創るのでしょうね。そう考えるとセレンディピティもレジリエンスが強くなかったら発揮できないかもしれません。

そうでしょうね。レジリエンスの弱い人は,培地にアオカビの混ざったペトリ皿を見ると,「ああ失敗した」と思ってすぐに培地を捨ててしまうかもしれないし,焦げたリンゴを見ると,「こんなまずいものはどうやったって上手い菓子にならない」とあきらめてゴミ箱に投げてしまうかもしれません。

それを教訓に,失敗しても過度に落ち込まず,失敗から成功に転じる何かを得ようとする姿勢を貫こうと思いました。レジリエンスは日常生活のいかなるときにも大事な力(フォース)ですね。

よくよく考えれば,高級甘口ワインの貴腐ワインや,シャンパンもセレンディピティだった。貴腐菌に感染してしわくちゃになったブドウを試しに絞って醸造してみようと勇気も好奇心もあるレジリエンスの強い醸造家がいなければ,今現在,私たちはソーテルヌのシャトー・ディケムは飲めなかったわけだし,シャンパーニュ地方の修道士,ドンペリニヨンが発酵途中のワインを誤って瓶詰めしなければ,シャンパンを今頃楽しめなかったわけですからね。

レジエンスの高い昔の醸造家とドンペリニヨン修道士のセレンディピティに乾杯! 感謝感謝!!

なにがなんでも最後はワインの話に持ってくる私にも乾杯!!

2015.9.3

同調圧力に弱い私たち‐アッシュの実験からみるレジリエンスの重要性と必要性

秋の気配が漂ってきたのに,ブログの筆が進まない。夏バテが来ているのでしょうか?

先日,コーチング仲間との勉強会で,私が講師となり,チャルディーニの「影響力の武器」を共有しました。

「影響力の武器」に書かれている,人に影響を与える6つの原則(好意,返報性,一貫性とコミットメント,権威,希少性,社会的証明)は,心理学にとどまることなく,マーケティング(特にダイレクトレスポンスマーケティング)に広く活用されています。

勉強会に一人遅れて来られる方がいると聞いた私は,社会的証明のエビデンスとして,有名な「アッシュの同調実験」を行いました。これは,ある1つの線と同じ長さの線を,3つの異なる線から選ぶという心理実験なのですが,複数の参加者のうち,1人の被験者以外はすべていわゆる「サクラ」で,3つの線のうち,あらかじめ明らかに誤った回答をするように申し合わせています。
遅れて来られた被験者が入場すると,おもむろに「ある種の知覚実験です。」と私が言って,試験が始まり,被験者以外のサクラ(今回は6名)が次々と誤った答えを回答し,最後に被験者に回答を求めて,同調して誤った答えを言うか,それとも同調することなく,毅然と正しい答えを言うかを調べる実験です。
アッシュの同調実験

結果,狙い通り,被験者の方は,同調して誤った答えを回答されました(被験者の方,誠に申し訳ございません)。

この実験から,人は,正しい見解を持っていても,集団内の意見がそれとは違うと,そちらの意見に追従してしまいやすいという傾向を示しています。「社会的証明」が如何に人の行動に影響を及ぼすかがわかりますね。

日本人は,他の民族に比べ,特に「社会的証明」に影響されやすい国民性をもっていると言われています。物事を冷静に思考することなく(思考停止状態で),大多数のメディアや伝聞情報に影響を受け,意思決定する人が如何に多いことか…。

レジリエンスの強い人は,状況を冷静に論理的に客観的に把握し,感情や行動をコントロールすることができますので,「社会的証明」の同調圧力にさほど影響を受けることなく,判断をすることができます。できるはずなんです。

同調圧力の程度は社会の鏡で,今の日本は,かなり同調圧力が強くなっているとどこかのメディアで紹介されていました(これも情報操作だったりして…)。いずれにしても,現代は,個人のレベルでも組織レベルでもレジリエンスの重要性と必要性が高まってきているということなのでしょう。

アッシュの同調実験からは,別の示唆も得ることができます。集団内の特定の一人(多くはリーダーシップをとる人)が,属する(または率いる)集団内の多数者の意見が変わったと判断すれば,前言を撤回し,あたかも前言なんてなかったかのようにふるまい,平然と真逆の主張をするという示唆です。

あれっ?? この構図,最近,どこかの主要都市の首長(かつとある政党の党首)が繰り出す言動を想起させるような…

皆様も「社会的証明」の悪用の罠にはまらないよう,レジリエンスを鍛えていきましょう。