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2015.4.30

離職率を減少させる方法②-離職の理由と人事担当者の認識

前回のブログでは,離職率の実態を報告しました。今回は,離職者の離職理由と人事担当者が感じる新入社員の特徴をみてみましょう。

離職者の離職理由

最終学校後に初めて就職した会社を退職した理由を見てみると,「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」が22.2%,「人間関係が良くなかった」が19.6%,「仕事が自分に合わない」が18.8%,「賃金の条件が良くなかった」が18.0%,「会社に将来性がない」が12.4%となっていました(図1)。会社の労働条件・給与待遇の問題が最も多く,次いで職場の人間関係,職務の適応性の問題が続いています。

退職理由
図1 最終学校卒業後初めて勤務した会社を退職した主な理由(2011年,厚生労働省)

人事担当者が感じる新入社員の特徴

一方で,新入社員を採用し,教育する人事担当者の側の気持ちを見てみましょう。図2は,人事担当者にアンケートした新入社員の特徴の調査結果を示しています。人事担当者が考える新入社員の特徴は,「受身的である」,「まじめである」が55%を超え,「精神的に弱い」が38%,「他者との争いを好まない」が35%,「失敗を恐れる」が32%を占めています。この結果から,人事担当者は今の新入社員に対して,総じて「消極的でプレッシャーに弱い」という印象を持っているようです。

人事担当者が感じる新入社員の特徴
図2 人事担当者が考える新入社員の特徴(2012年,HR総合調査研究所)

離職者の離職理由のうち,労働条件や給与待遇が原因の場合は,所属する企業の努力で少しでも改善しなければ新入社員を教育して離職を減少させることは難しいですが,人間関係の問題や,仕事の適応性の問題は,社員教育や社内研修で解決することが可能で,それによって離職率は減少すると思われます。そのような取り組みを行うことによって,人事担当者が抱く新入社員像である「消極的でプレッシャーに弱い」といったイメージも払拭できるかもしれません。

2015.4.27

離職率を減少させる方法①-「離職率の実態」現状を把握しよう

先日,大阪のとある娯楽サービス産業会社の人事担当者と話していたときのこと。その会社も,業界の傾向である高い離職率に悩まれているようで,どのように軽減すべきか思案し,色々な取り組みを検討している最中とのことでした。その一環としてレジリエンス・トレーニングの導入も考えているそうです。

離職率の実態

そこで平成24年度の厚生労働省のデータを調べてみました。平成21年(2009年)から平成23年(2011年)の間の新卒3年社員の離職率は,高卒,短大卒,大学卒いずれも上昇しています(図1)

離職率の増加
図1 高卒,短大卒,大学卒の新卒3年社員離職率推移(平成24年度 厚生労働省)

事業規模別の離職率データを見ると,5人未満の事業所の大卒離職者は60%に達しており,5~29人の離職率は50%を超え,30~99人の事業所でも40%に達しています。100人未満の企業では2人に1人は3年以内に離職しているのですね。なかなかの衝撃度のあるデータかと思います。

事業規模別離職率
図2 事業規模別離職率(平成24年度 厚生労働省)

次に産業別の離職率のデータを見てみると,宿泊業・飲食サービス業が52.3%,生活関連サービス業・娯楽業が48.6%,教育・学習支援業が48.5%,小売業が39.4%,医療・福祉が38.8%になっています(図3)。離職率の高い産業は,共通性がありそうですね。

産業別離職率
図3 産業別離職率(平成24年度 厚生労働省)

現状をデータから分析してみると,課題と対策が見えてくるかもしれません。次回のブログは,離職理由を考えてみましょう。

2015.4.24

生きてるうちは挑戦せなあきまへん

先日,介護事業会社の社長とお話ししていて,非常に興味深い老婦人の話を伺いました。
その方は,現在90歳ですが,10年前の80歳のとき,パソコンを習い始めたそうです。80歳で今まで習ったこともないパソコンを学び始めるのも凄いですが,習い始めてすぐに2台のPCを壊してダメにしたそうです。でも全く諦めず勉強を辞めないところも凄い。なぜなら新しいことを習い始めるのが大好きだからとのこと。
80歳になるまで,さまざまなことを経験し,何度も「もうあかん」とか,「死にたいわ」とか思うときが会ったけど,その都度,「死んでしもうたら,新しく面白いことができひんわ」と思い直して生きてきたとのお話しでした。何というレジリエンスの強さ。
そのおばあちゃんが,80歳のとき,3台目のPCでパソコンを改めて習い始めようとしたときに,介護事業会社の社長に話した言葉,「生きているうちは挑戦せなあきまへん。」80歳になっても今流行りの“終活”など眼中になく新たな学びに挑戦するおばあちゃんだからこそ重みが出てくる言葉ですね。
そのおばあちゃんは90歳になる今でもご壮健で,社長とPCでメールのやりとりをしているとのこと。さらに嬉しいことに,その社長は,私の基礎セミナーで習った“レジリエンス”が気に入り,メールマガジンで折に触れ,レジリエンスを説明されているとのことでした。レジリエンスの嬉しい連鎖ですね。
90歳のおばあちゃんのレジリエンスの強さを伺うと,レジリエンス講師の仕事が何だか虚しくなりますが,老婦人のレジリエンスに最大の敬意を表し,明日も仕事を頑張っていこうと思う私でした。

2015.4.21

心乱れる昼下がりのひとときからのフロー体験

今日は,昨日とは一転して晩春の陽気な天気でしたが,仕事面でもプライベート面でもレジリエンスが試されるような心乱れた一日でした。特に午後は,自分でもどこからこみ上げてくるかわからない憤りとかイライラ感がおさまらず,感情のコントロールが難しい状況に陥りました。夕方になって心を落ち着かせ,今日は夕飯の当番だったと気を取り直して夕飯の支度にとりかかると,時間を忘れて夕飯作りに没頭していました。こういう時間を心理学でいう「フロー」というのでしょうか。

フローとは,『人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態』をいい,ポジティブ心理学者であるミハイ・チクセントミハイが提唱した概念です。スポーツの世界でよくゾーンに入ったとかいう現象もフローと同じだと思います。

フロー体験が成立するには3つの条件が必要になります。1つは「明確な目標」,2つ目は「挑戦と能力のバランス」,3つ目は「具体的なフィードバック」。今回の夕飯づくりは,明確に美味しい料理をつくり,前回上手くつくれなかったメニューに再挑戦するという目標がありました。また,私にとって料理は挑戦であり,適度に能力を少し超える技術を必要とするものなので,挑戦と能力のバランスもとれていました。そして,めったに料理を褒めない家内からの予想を超えた好評をもらい,具体的なフィードバックもいただきました。3つの条件がそろいましたね。まさにフロー。

フロー体験後の効果には,自己成長,モチベーションの増加,心的エネルギーの高まり,充実度・幸福度の向上などがあります。レジリエンスも当然強化されます。チクセントミハイは,フローを長く継続することが創造性を高めるとも言っていたような…。

何はともあれ,午後のあのたちの悪いネガティブ感情はどこにいったのだろう??すっかり気分がポジティブになり,良かった良かった。

2015.4.20

雨男の心理学-“すっぱいぶどう理論”的社会貢献

今日は一日雨でした。雨っていうと,マイナスなイメージを持たれる方が多いかと思いますが,私は雨は嫌いではないです。これが雨男と言われる所以でしょうか?梅雨の時期に生まれたからでしょうか?

私の雨男ぶりは,友人・知人には有名で,何か屋外のイベントに参加して雨が降ってしまうと的面,私のせいにされてしまいます。花見だったり,サッカー観戦,野球観戦だったり,仲間内の研修・勉強旅行もそうでした。予報では降水確率0%の晴天のときも私が参加を決めると雨が降ったりしたことも数多くあります。最近では,雨などと生易しいものではなく,爆弾低気圧や台風が1つや2つ襲来することもあります。私は嵐を呼ぶ男なのです。

大切な日に雨が降ったために生じる不満は,心理学では「認知的不協和」と呼ぶそうです。このとき,不協和なままでいると,人はフラストレーションを起こすので,「雨男である松岡さんがいるから雨が降ったんだ。」と不合理な理屈をつけてでも不協和を軽くしようとします。もちろん,「自然現象だから仕方がない。」と合理的に考えても認知的不協和は軽減されます。普通,そう考えてくれてもよさそうなものなのに…。

欲求が満たされないとき,欲求と現実のギャップを埋めるために都合のよい理屈をつけて埋め合わせる人の心理的機能をイソップ童話から引用して“すっぱいぶどう理論”と呼びます。大事なイベントが雨で台無しになった原因を雨男のせいにするのは,“すっぱいぶどう理論”ということですね。

まあ不合理ながらも友人の認知的不協和を少しでも軽減することに貢献できる私はなんと幸運な男なのでしょう。そう捉えれば,雨男とレッテルを貼ってくれた多くの友人に感謝しなければ…。ポジティビティもレジリエンスも高まってきました。

窓外の降りしきる雨を見ながら,そんな他愛もないことを考えていた一日でした。