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2016.4.23

フローの功罪③-潜在的にネガティブな中毒を誘因する可能性がある

皆様、こんにちは。

レジリエンス研修講師,ポジティブ心理学コーチの松岡孝敬です。

今回は,フローの功罪の第3弾をお送りします。フローの危険性について書きます。

フロー体験は,充実した人生を送る上で,理想的な体験,幸福な人生をつくる上で

重要な構成要素の1つではありますが,

実は,潜在的にネガティブな効果もあります。

これは,フロー理論を提唱したチクセントミハイも指摘していることです。

フローがもたらす活動には,不道徳な活動も含まれます。

フローの前提条件を思い出してください。3つありましたね。

1.明確な目標

2.チャレンジとスキルのバランス

3.具体的なフィードバック

これらの条件に当てはまるフローをもたらす活動には,

スポーツや芸術活動,将棋・囲碁などがあると触れましたが,

実は,他にもフローの前提条件がそろった活動があります。

それがギャンブルなのです。

最近,巨人軍の選手が野球賭博にかかわったり、

バドミントンの金メダル候補の選手が違法カジノにはまったりした

残念なニュースが報じられました。

カジノ

これは私見ですが,おそらくバドミントンの2選手(特に年配の選手)は,

カジノでのギャンブルがフロー体験になってしまい,

それによってギャンブルの依存症(中毒)になってしまったのではないかなあと

推察しています。

また,勝負に世界に生きるアスリートや棋士は,本業の活動でフローに入りやすいですが,

それが何らかの形で閉ざされると,(バドミントンの年配の選手はケガだったようですが,)

代替的なフロー活動を求めるのかもしれません。

それが,たまたま違法カジノのギャンブルで,

その人にとってそれがフロー体験になってしまったのではないかと思います。

バドミントン選手の違法カジノ事件があったとき,テレビのワイドショーの

女性コメンテーターで,元水泳のオリンピック選手が,なぜ,2人がギャンブルに

はまったのか,勝負の世界に生きるプロは,勝負の結果がすぐにわかるギャンブルに

はまりやすいのではないかという意見に対して,声を大にして反論していました。

「スポーツの勝負の世界とギャンブルを一緒にしないで」と。

ただ,フローの前提条件からすれば,スポーツもギャンブルも

同じフローをもたらす活動になるんです。

このように,フローには,

1.中毒を引き起こすこともある⇒ワーカホリック,オーバートレーニング症候群

2.広い視野を失うことにつながる。

といった危険性も指摘されています。

誤解のないように書きますが,フロー=依存症中毒では決してありません。

依存症が発生するメカニズムは,脳の報酬系の機能が関係しますが,

その話は,別の機会にブログで書こうかなあと思います。

チクセントミハイもフローの危険性について,次のようなことを語っています。

「フローをもたらす活動は,心の秩序をもたらすことで我々の存在の質を高めてくれるが,

一方で中毒を引き起こすこともある。」

「フロー体験は,人生をより豊かで,濃密で,意味のあるものにする

可能性をもっているときだけ良いということができる。

自己の強みや複雑性を高める限りにおいて,フロー体験は好ましいものとなるのだ。」

フロー体験は,良い効果ばかりでなく,今回説明したような危険な効果も含んでいます。

人生を豊かにする,充実したものにするためにフロー体験は重要で利用すべき

ですが,それと同じくらい重要なのは,

必要なときにフローから抜け出す方法を探ること,

必要に応じてフローに入ったり抜け出したりすることをコントロールすることなのです。

2016.4.21

フロー体験の功罪②-チャレンジし続けることで自己成長・自己実現を達成できる

皆様,こんにちは。

レジリエンス研修講師ポジティブ心理学コーチの松岡孝敬です。

今回のブログは,前回の続き,「フロー体験の功罪②」です。

フローの説明は前回のブログの通りですが,体験がフローになりうる条件としては、

1.明確な目標

2.チャレンジとスキルの適切なバランス

3.具体的なフィードバック

の3つが必要と書きました。

そして、フロー体験の効果としては,自己成長,モチベーションの増加,

心的エネルギーの高まり,充実度の高まりが挙げられています。

とりわけ,チャレンジすることでスキルを磨き,

スキルが向上すればさらに高いチャレンジをすることで,

自己成長自己実現する効果は高いでしょうね。

なので,フローをもたらす活動に,スポーツや芸術活動,囲碁・将棋などの思考系ゲームが

入っているのも頷けます。

プロスポーツ選手やプロのアーティスト,プロ棋士は,

チャレンジと技術向上を繰り返し続けながら,常に成長し続けなければ、

生き残れない世界に生きている人たちですから、

フロー体験を常に求めて自己成長を続けているような、そんな感じがします。

ミハイ・チクセントミハイは,下のような図を用いて,

フローを通しての成長を説明しています。

フロー理論の図1

Aは,初心者の状態。サッカーで言えば,リフティングはおろか,

ボールを蹴ったことさえもないような人。それがAの段階です。

やがてボールの蹴り方,扱い方も慣れて,それなりにリフティングが

できるようになり,パスもできるようになるとBの段階に至り,

退屈感を覚えます。なので,さらにサッカーが上手くなりたい,

もっと高い技術を習いたいと意欲のある人は,

様々なタイプのキックや,ドリブルの仕方などを習い始める。

それがCの段階ですね。Cに達すると,やがて技術も習熟し,

退屈感が生まれ,Dの段階に至ります。

さらにサッカーを楽しむには(フロー)に入るには,

よりチャレンジしなければならなくなる。

Bの段階やDの段階で良いやと諦めちゃう人は,自己満足しきって,

プロにはなかなか慣れないでしょう。

プロアスリート,プロアーティスト,プロ棋士は,

必然的にフローを追い求める職業ということになりますね。

 

では,普通のビジネス,仕事はフローにならないのでしょうか?

仕事もフローをもたらす活動ではありますが,

多くの日本人は,「仕事がフロー?」と首をかしげると思います。

その理由は,

そもそも仕事が大嫌い

っと言ってしまえば身もふたもないですが,

おそらく,私が考えるに…、

1.明確な目標が持てない。

2.スキルが向上したのにチャレンジできる環境が整っていない。

3.具体的なフィードバックがない(おざなりな一直線の評価制度)。

が理由だと思います。

日本の経営者も,従業員が自分の会社の仕事をフロー体験とするような

マネジメントすれば良いのに。

時間も我も忘れて仕事に従事してくれるはずなのですが(⇐悪魔のささやき)

挑戦し続けることで自己成長・自己実現,ひいては幸福度を高め,

レジリエンスも高めるフローですが,

実は危険な側面もあります。最近もフローがもたらす残念な事件がありました。

次回のブログでは,その辺のことを書こうと思います。

 

さて,前回のブログでワインティスティングが私のフロー体験と書きました。

最近では料理が加わりましたね。

私が料理をするときの明確な目標は,

その日に飲むワインとの相性を合わせること。マリアージュを完璧にすること。

挑戦と技術のバランスは,料理が不得手で低スキルなのに大それた挑戦をして

フローにはまろうとしているます。この条件はクリアですね。

具体的なフィードバックは,カミサンからの食後のコメントです。

IMG_1247

一生懸命チャレンジしていますが,フィードバックが厳しすぎて…( ノД`)シクシク…

未だフローには実は達していない。チャレンジは続くよどこまでも(;’∀’)

 

 

2016.4.19

フロー体験の功罪①-極度に集中・没頭する体験がレジリエンスと幸福度を高める

皆様、こんにちは。

レジリエンス研修講師ポジティブ心理学コーチの松岡孝敬です。

すっかりブログの更新をさぼってしまっていました。

今月は,いろいろとバタバタしてしまったもので…。

先日の4月12日(火),パソナウィメンズキャリアカレッジ東京校にて,

ポジティブ心理学入門講座」を開講させていただきました。

20160412ポジティブ心理学入門講座

定員20名の中,ほぼ満席状態で,とても気分よく講義をしました。

そのとき,フロー体験の話をし,フローに入るコーチングのワークをしました。

フローとは,心理学用語で,

「人間が活動に完全に没頭し,精力的に集中している感覚に特徴づけられ,

完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における

精神的な状態」を言います。

心理学者のミハイ・チクセントミハイ博士が提唱した理論です。

ミハイ・チクセントミハイ

よくスポーツをしているときに「zone(ゾーン)」に入るとか,表現しますが,

その心境,境地もフローに近いものだと思います。

ピークエクスペリエンスとも表現されます。

ポジティブ心理学者のマーティン・セリグマン博士は,自身のウェルビーイング理論で,

フローを体験できるような充実した人生が幸福の構成要素の1つと唱えています。

PERMA理論の中のengagementの要素ですね。

PERMA理論は,説明すると少し長くなるので,いつかブログで解説させていただくとして,

時間の感覚をなくして,我を忘れて何かの活動に没頭する体験をした方がいかに少ないか

実感しました。

フローをもたらす活動には,スポーツ,絵画や音楽,執筆などの芸術活動,

将棋,囲碁などの思考系ゲーム,学習,仕事などがあります。

フローをもたらさない活動としては,だらだらと休んだり,テレビを見たりする活動など

が含まれます。

家事もフローをもたらさないと言われていますが,条件によります。その条件とは?

フローを体験するには,前提条件があります。その前提条件が満たされなければ,

なかなかフローには入りません。その前提条件とは,

1.明確な目標

2.挑戦と技術の適切なバランス

3.具体的なフィードバック

があります。

つまり,この前提条件が当てはめれば,家事もフローに入ることがあります。

今回の「ポジティブ心理学入門講座」の受講者の方々にフローを体験したことがない方が

多かったのは,3つの前提条件が当てはまらないか,

そもそも,前提条件を意識しながら活動していないのか。

会社のCEOなどトップマネジメントもフロー未体験の方が多いと思います。

それは,「具体的なフィードバック」が得られないからです。特に日本のトップ。

孤独でお山の大将,裸の王様になりやすい。

海外のCEOが必ずと言ってよいほど,メンターやエグゼクティブコーチをつけているのは,

適切なときにフィードバックを得たいからというよりも,フローに近い体験を得たいからかもしれません。

だから,日本の経営者の皆様,

優秀なメンター,コーチをお傍に雇った方が良いですよ(←私のような( ´艸`))

フロー体験がもたらすEngagementの向上は,幸福度を高めますし,

ひいてはレジリエンスも高めます。

フローは,幸福にもレジリエンスにも重要な体験ですが,

実は良い面だけでなく危険性もあります。

次回のブログでは,良い面を少し解説します。

ちなみに私のフロー体験の1つは,ワインティスティングです。

これは世界で唯一,私だけがフローになれる活動です。

私のワインティスティングの明確な目標は,世界中のワインを試飲し,

いずれロバート・パーカーのパーカーポイントという

権威があるような、ないような、とあるワイン生産者のレントシーキングをしているような、

そんな基準よりもはるかに明解で,

誰しもがわかりやすい「松岡ポイント」という

グローバルスタンダードを創ることです。

挑戦とスキルのバランスは,ワインの試飲の量と質への挑戦,

自分の味覚のスキルのバランスです。

そして,具体的なフィードバックは,皆様からの評価

なによりもバッカスの神様からの評価でございます。

すみません(;’∀’)、久々のブログなのにマジメなフローの話が,

ふさけたワインのフローの話で締めてしまって…。

バッカスの神様にお叱りを受けてしまう( ノД`)シクシク…