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2015.6.28

傍観者効果を未然に防ぐレジリエンス(逆境力)‐名古屋に向かうのぞみでの出来事

ちょっと自慢話。誕生日に免じてお許しを。

いや自慢話に結局はなっていないかもしれません。私も集団心理の罠にかかり,外国人観光客に不快な思いをさせてしまったかもしれなかったので。

6月27日(土),翌日の名古屋での講座受講を控え,前日入りするためお昼頃に東京から発車するのぞみ指定車両に乗り込んだときの出来事です。新横浜を過ぎてまどろんでいると,車両内から「Do you speak English?」とネイティブな英語が聞こえてきました。どうも欧米から旅行に来た初老の男性が,英語を話す日本人を探しているようでした。私は英語はさほどうまく話せないし,多分,車掌か誰かがちゃんと応対するだろうと思い,再びまどろんだのでした。

それから,初老の外国人男性は,車内販売員(売り子さん)の女性に話しかけたところ,会話が通じなかったのか,さきほどよりも一層慌ていらつき,「Do you speak English?」と繰り返し座っている乗客に話しかけながら,車両を歩いていたのでした。

さすがに誰も応対しないのもまずいなあと思い,下手な英語を顧みず,「What’s wrong?」と話しかけて応対した私でした。
すると,件の男性は,安どの表情を浮かべたのち,しばらく私と会話して疑問が解決し,本来座るべき座席のある車両に向かったのでした。

聞くと,彼は,自分の切符を見せながら販売員に「この列車は名古屋駅に行くのか?」(ここからは日本語でお送りします。日本人ですので)と英語で尋ねると,販売員の女性は,「No!No!」と話したというのです。おそらく女性は,切符(自由席でした)を見て,「この切符は自由席のもので指定車両には乗れませんよ。」と言いたかったんだと想像しますが,彼にとっては,それ以前に,「この新幹線は名古屋には行かない。」と言われたと誤解し,パニックになったんでしょう。彼にとっては相当レジリエンスが試される状況だったに違いありません。不安やイライラといったネガティブ感情が渦巻き,心中穏やかではなかったでしょう。「親切で優しいと評判だったのに日本人はなんて不親切なんだ!」とか「名古屋に向かうチケットを買ったのに名古屋へ向かわないなんてどういうことだ!」なんて思い込みから様々なネガティブ感情が発生したのだろうなあと察しました。

その一方で,当初の私を含め,無関心を決め込んだ多くの乗客の心には,「誰かが応対してくれるだろう」とか「英語しゃべれないから無理だよ」といった思い込みがあったのだろうと思います。

この状態から双方が幸福な状態にするには,勇気をもって誰かが応対し,双方の立場のネガティブな思い込みを処理する必要がありました。レジリエンスを思い切り発揮した時間でした(←そんなに大層なことか?)

このときの私と外国人男性が乗っていた車両内の乗客の心理は,心理学用語で「傍観者効果」といいます。この効果は,「ある事件に対して、自分以外に傍観者がいるときに率先して行動を起こさない」集団心理の1つで,傍観者が多いほど起こる確率というか効果は高いと言われています。

傍観者効果の研究のきっかけとなった悲しい事件が,1964年にニューヨークで起こった「キティ・ジェノヴィーズ事件」です。この事件は,キティ・ジェノヴィーズさんが深夜に自宅アパート前で暴漢に襲われたとき,彼女の叫び声で近隣住民38人が事件に気づき目撃したにもかかわらず,誰一人警察に通報せず,助けにもいかず,結局暴漢はその後二度現場に戻り,彼女を殺害してしまったという痛ましい事件です。

このような傍観者効果が招く悲惨な事件を防ぐには,傍観者効果が発生しないような社会システムの構築が重要視されています。

私は,多くの市民のポジティビティが高まり,レジエンスが強化されれば,多くの人々の幸福度が増し,利他の心が浸透しますので,傍観者効果も未然に防げると思います。そんな社会をつくれるお手伝いをしたいなあと感じます。

それにしても私の英語はひどすぎる。レジリエンス資源を思い切り消耗してしまった…。TOEIC満点達成は夢のまた夢ですね(泣)。

2015.6.26

日本の防疫・防災レジリエンスをつくった男‐後藤新平

韓国での中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大は収まる気配がないですね。対岸の火事ではなく,日本も十分な対策をとってほしいものです。

日本列島は四方を海で囲まれているので感染症の拡大も水際で防げるといった話は大昔の話で,今は飛行機で大量移動できる時代ですので,防疫面での日本の地政学的な利点は薄れていますからね。

明治初期の医師であり,のちに政治家でもある後藤新平は,防疫の重要性を強く感じ,その対策を誰よりも早く実行した人でした。

彼は,明治28年(1895年)の日清戦争時,帰還兵からの感染症が国内に拡大したときの危機的な状況を医師として十分に判断し,臨時陸軍検疫部事務官長として広島の似島検疫所で検疫業務に従事しています。まさに感染症を水際で防ごうとしていたのでしょう。後藤のことだから水際で防止するだけでなく,感染症が万一拡大したときのリスクマネジメントも考えていたかもしれません。

その検疫業務の行政手腕が,当時の臨時陸軍検疫部長の児玉源太郎の目に留まり,児玉が台湾総督に就任した際には,児玉は後藤を民政局長に抜擢しました。児玉と後藤の2人を中心にして,新渡戸稲造などの行政能力の高い優秀な日本人が集まり,台湾は統治されていました。このときも後藤は,仮に災害が発生したり,感染症が流行しても,都市機能が速やかに復興できるような計画に沿って統治していたようです。まさにレジリエンス的な都市づくり・組織づくりですね。

関東大震災後,後藤は帝都復興院総裁に就任し,極めて迅速に帝都復興計画を策定し,議会に大幅な復興予算を通し,東京を災害に強い都市に変革しています。後藤が生きていれば,東北大震災からの復興計画がなかなか進まない今の現状を嘆いているかもしれません。

台湾民政局長時代,ダーティーな噂もある後藤ですが,ネガティブな一面も人間なのであるのでしょう。

後藤が亡くなって80年近く経ちましたが,後藤が残した検疫レジリエンスの精神はいまだ日本に脈々と残っていると信じつつ,隣国のMERS感染拡大が収束することを願っています。

2015.6.22

生きているだけで幸せ‐中立進化説が導くレジエンス

チャールズ・ダーウィンの進化論「自然選択説(自然淘汰説)」はあまりにも有名ですよね。

環境に適応した形質をもつものが生き残って進化するという,適者生存の理論です。よくビジネスの世界でもこの理論は引用されてて,環境に適応するように変化しなければビジネスパーソンも企業も生き残れない,淘汰されるなんて喩えられていますよね。

適者生存は、「サバイバル オブ ザ フィッテスト」といいます。

自然選択説に対して、非常にユニークな進化論を提唱した日本人の分子遺伝学者がいました。木村資生氏です。

彼の進化論は、「中立進化説」といいます。この説は,今では定説として通っています。

分子レベルの遺伝子の変化(DNAを構成する塩基配列の1つが変わる突然変異)は,実は大部分は表現型(外面に現れる形質のこと)として現れず,生存に有利でも不利でもない中立的なものなのです。その中立的な突然変異をした遺伝子が集団に拡散するのは,全くの偶然のなせるわざで,これを学術用語では「遺伝的浮動」といいます。

中立的な突然変異が偶然,集団に拡散し,集団内の遺伝的多様性が増し,中立的な突然変異からさらに偶然,表現型に現れる遺伝子に変異し,それが環境に適応すれば淘汰されずに残る。つまり,自然淘汰は,進化の決定要因ではありますが,進化をドライブする原動力は,突然変異遺伝的浮動。要するに,“偶然”,“たまたま”なのでした。

木村資生氏は,この偶然のなせるわざを,「サバイバル オブ ザ ラッキィスト」(幸運なものが生き残る)と表現しています。

要するに,私たち,ヒト(ホモ・サピエンス)という種が存在するのは幸運のなせるわざで,ヒトという種が進化して現れなければ,当然,私たちはこの世にいないわけですね。本当にラッキーだから今,生きている。そう考えると生きているだけで幸運で幸せっていう考え方は理にかなっていると思いませんか?

ヒトという種を生み出した偶然,遺伝的浮動に感謝せずにはいられません。このような生命の進化の歴史レベルの壮大な時間軸に感謝をすると,レジリエンスが思いっきり強化される気持ちになります。

さらに,男女が出会って恋愛関係になる確率は,とある情報では7200兆分の1だとか(←ホンマかいな?)。そんなことを考えると,私たちがこの世に生を受けるなんて奇跡に近いですよね。

昨夜,プチ同窓会で,同級生の小さなご子息と会話しながら,ふと,木村資生さんの「サバイバル オブ ザ ラッキィスト」が思い浮かんだのでした。ちょっと生物的な話ですみません。元生物教科書編集者なので…。次回はやわらかいブログに戻ります。

2015.6.18

レジリエンス講師になってつくづく良かったなあと思った日

レジリエンスを教えることでレジリエンスを鍛えられる。そんなことを感じた一日でした。

昨日ほど,レジリエンス講師になり,起業して良かったと思える一日はありませんでした。起業してまだ4か月しか経っていないのに。

クライアント様は,まだ実績を示していない私と弊社に対して全幅の信頼をもって社の人材育成と社員のレジリエンスの強化を一任していただきました。最初にお会いしてから強いラポールと信頼を甘受しました。

「御社に人材育成のご指導をいただきながら御社とともに成長していきたい。」

とても有難いお言葉を賜りました。本当に感謝感謝です。

レジリエンス研修を行うことによって,社と社員様のポジティビティが高まり,レジリエンスが強化し,社と社員様の幸福度が高まって持続的に繁栄すべく全力を挙げて奉仕しようと決意しました。

レジリエンスを強化することで自分のレジリエンスも強まり成長する。

ひと様の幸福度を高めるお手伝いをすることで自分も今以上に幸福になる。

そんな一日って一年でめったに訪れない。ポジティビティあふれる心地よい一日でした。

このような日が永遠に続くと強く信じ,今日は東京に向かいます。

2015.6.16

科学は仮説や!‐レジリエンスが試される科学的事実の見直し

先日,バラエティ番組を観てるとおやっと思うことがありました。

活性酸素の除去や老化の抑制などに関連し,長寿遺伝子と呼ばれていたサーチュイン遺伝子ですが,寿命延長には機能していないという研究結果が報告されたとのこと。それももう4年前の2011年9月にロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ健康加齢研究所のデービッド・ジェムズ氏率いるチームによって「Nature」誌で発表されており,しかも,サーチュイン遺伝子の長寿効果を最初に発表したマサチューセッツ工科大学(MIT)のレオナード・ガランテ氏も,「Nature」誌で実験的な不備を認めたとのこと。

教科書編集者時代にとある老教授がおっしゃった教訓を思い出します。

「科学は仮説や!」と。

一見して定説で真理と思われた理論なり現象も,深く研究すると,定説ではなくなってしまう。生命現象を紐解く理論には,現段階で定説は極めて少ないのかもしれません。

心理学も同様ですね。例を挙げると,フロイトの夢判断や理論などは,発表当時は定説だったかもしれませんが,現代では,理論の誤謬や矛盾が指摘されてて,必ずしも定説とは言い切れないように感じます。

それでいて,科学は全くあてにならないといった「反科学主義」的な暴論には陥らないようにしよう。常に科学的な見方を保ち,検証過程に目を光らせなければならないという教訓を得たと肯定的に今の状況をみたいと思います。

レジリエンス・トレーニングもポジティブ心理学などの科学的証拠をベースにしていますが,それらのエビデンスも本当に真理なのか常に検証しなければなりませんし,新たな知見が発表されれば,それを取り入れたプログラムも開発しなければなりません。

前述したサーチュイン遺伝子について,長寿効果は否定されていますが,マウスなどの哺乳類を,高脂肪の食事や加齢関連の疾病による代謝ダメージから守る効果があるとは報告されています。

それにしても,赤ワインに多く含まれているポリフェノールの一種であるレスベラトロールは,サーチュイン遺伝子を活性化する作用があるといわれていたのですが,サーチュイン遺伝子に長寿効果がないとなると,赤ワインを多量に飲んでも長生きはできないことになります。当然といえば当然ですが…。
赤ワイン

どうしよう。長生きできると思ってあんなに赤ワインを好きでガブガブ飲んでいたのに(←嘘)。もう赤ワインは卒業しようかな。

嘘です。死ぬまで飲み続けます。