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2015.5.28

ポジティブ心理学とポジティブシンキングとの違いpart3-ポジティブ心理学的な考え方とそうでない考え方

前回,前々回のブログの続き。シリーズ最終回です。

前の2回のブログで,ポジティブ心理学とポジティブシンキングとの違いは,「科学的証拠の有無」と「ネガティビティの捉え方」と記しました。

今回は,ポジティブ心理学的なものの考え方とそうでない考え方を説明します。

ポジティブ心理学的な考え方

ポジティブ心理学的な考え方とは,以下のようなものの考え方と思います。

1.ネガティブな部分(感情)を認識しつつ,それを抑えながらポジティブな部分(感情)を増やそうとする。

2.弱みを認識しながら,弱みの克服よりも自己の強みを認識し,活用することを考える。

3.リスクをしっかり認識しながら,物事を楽観的にとらえる(健全な楽観主義)。

では,ポジティブ心理学的なようで,実はそうでないものの考え方とはどういうものでしょうか?

似ているがポジティブ心理学的でない考え方

ポジティブ心理学的なようで,実はそうでないものの考え方とは,以下のようなものの考え方と思います。

1.ポジティブな部分(感情)だけを見て,ネガティブな部分(感情)を無視する。

2.弱みを認識せず,強みばかりを気にする。

3.リスクを気にせず,やみくもに楽観的に物事をとらえる(無謀な楽観主義)。

以上,3回にわたってポジティブ心理学とポジティブシンキングの違いをまとめてみました。次回以降は,少しやわらかいブログに戻します。

2015.5.26

ポジティブ心理学とポジティブシンキングとの違いpart2-ネガティビティの捉え方

前回のブログから引き続き,ポジティブ心理学とポジティブシンキングとの違いについて

前回は,科学的証拠の有無がポジティブ心理学とポジティブシンキングとの違いの1つとし,ポジティブ心理学は科学という学問で,ポジティブシンキングは根拠に乏しい個人の考え方と説明しました。

今回のブログでは,もう1つの違い,「ネガティビティの捉え方」を説明します。

ネガティビティは必要か?不要か?

ネガティビティとは,怒り,不安,怖れ,嫌悪,嫉妬などのネガティブ感情と同じです。このようなネガティブ感情(ネガティビティ)を持つことは,決して気分の良いものではないですね。人間誰だって,不安感や恐怖感を抱いたりせず,イライラしたり怒ったりせず,または人を憎んだり妬んだりせずに過ごしたいと思っているはずです。(そんなことはないよと思っている人はゴメンナサイ。)

ネガティビティは気分の良いものではないですが,ある程度は私たち人間が生きる上で必要な感情です。例えば,恐怖感は,生命が奪われるような危機的な状況において,逃走行動を引き起こします。怒りは,自分の権利(生存権や幸福になる権利)が外敵から奪われそうになった状況で,外敵から権利を守るために戦う攻撃行動の原動力となります。さらに,不安感は,無計画な暴走行為を抑える働きをしますし,憎悪や嫉妬は肯定的なエネルギーに還元すると,爆発的な創造や発展を生み出します。

このようにネガティビティはすべて悪で排除すべきものではありません。むしろ,人間(あるいは哺乳類以上の動物)が生存していく上で必要な感情だと思います。ポジティブ心理学者もネガティビティは,
1.人間の基本的な性格を変えるきっかけを与えたり,
2.心の奥底に誘い,本当の自分と対話させたり,
3.謙虚さや道徳的な配慮,思いやりを身につけたり
することができるポジティブな効果もあると主張しています。

ポジティビティとネガティビティのバランス

ただし,ネガティビティはタチの悪い特徴があり,放っておくとネガティブスパイラルにはまって失敗を恐れたり,消極的な行動しかとれなくなって無力感が充満したり,最悪の場合,破局的な思考を招くことになります。ですので,ポジティブ心理学では,ネガティブ感情よりも多くのポジティブ感情を増やすことを唱えています。バーバラ・フレデリクソン博士の理論によれば,ネガティビティの3倍以上のポジティビティがあれば,人は上昇スパイラルに達すると言われています。

ポジティブシンキングでのネガティビティの捉え方

それでは,ポジティブシンキングではネガティビティをどう捉えるのでしょうか?

ポジティブシンキングでは,ネガティブな感情や出来事をポジティブな表現に変えることをよく行います。この行為は,一時的に人を肯定的な気分やプラスな思考にもっていくには効果があるかと思いますが,感情や行動のポジティブな面にしか焦点を当てず,ネガティビティを無視したり否定したりすることにつながります。ネガティブ感情が充満したまま無理やり心をポジティブに持っていこうとする行為が当たろうかなと思います。

このような行為は,ポジティブ心理学では「偽りのポジティビティ」と言うことがあります。バーバラ・フレデリクソン博士の言葉を借りれば,「目を閉じたポジティビティ」とも言えるでしょうか。「偽りのポジティビティ」は,人の健康を損ね,下降スパイラルに陥らせるような悪い効果があると科学的に証明されています。だから,ポジティブ心理学では,「偽りのポジティビティ」に陥ることなく,ネガティビティにもしっかり向き合い,それを科学的に解消・低減させ,ポジティビティを科学的に増加させることを研究しています。また,そのようなトレーニングを開発しています。

ポジティブ心理学は,ネガティビティと向き合いながら科学的に対処するものと捉えており,ポジティブシンキングは,ネガティビティを無視したり否定したりするものと捉える傾向が強いようです。このような「ネガティビティの捉え方」の違いが,ポジティブ心理学とポジティブシンキングを区別する大事なポイントと思います。

次回のブログで簡潔に要約しようと思います。

2015.5.25

ポジティブ心理学とポジティブシンキングとの違いpart1-科学的証拠の有無

久しぶりのブログ。

先週は東京遠征で忙しく,心身ともに疲れ切ってしまったのでブログを書く気持ちが起こりませんでした。こんなことではいけないと思い,気持ちを引き締めてブログ更新の頻度を高めていこうと思います。

最近,商談などで,「ポジティブ心理学をベースにしたレジリエンス・トレーニングはポジティブシンキングと何が違うのですか?」という質問をよく受けます。また,「ポジティブシンキングの伝道師たる松岡さんが,○○さんのネガティブキャンペーンをはっている○○を支持するのはどういう訳なんですか?」といった質問も受けたことがあります。その都度,ポジティブ心理学とポジティブシンキングの違いを説明していますが,やはりまだまだ誤解される方が多いようですね。

ポジティブ心理学者は「ポジティブシンキング」という言葉が嫌い?

マーティン・セリグマンやバーバラ・フレデリクソン,イローナ・ボニウェルなど著名なポジティブ心理学者の著書を読むと,必ずといってよいほどポジティブ心理学とポジティブシンキングとの違いに言及している印象があります。これは,多くの一般の人々が持つ,「ポジティブ心理学って,ポジティブシンキングのことでしょ?」という偏見に対して,ポジティブ心理学者が悩まされている証左でしょう。正直,このような偏見・誤解には,ポジティブ心理学者は迷惑に思っているだろうし,「ポジティブシンキング」という言葉と,その言葉が発する“ネガティブなイメージ”とポジティブ心理学とを同視する誤解に対して,辟易としていると思います。

私もポジティブ心理学者と同感で,「株式会社ポジティビティが提供するサービスと,ポジティブシンキングとは同じでしょ?松岡さんはポジティブシンキングの伝道師なんでしょ?」と思われると本当に残念な気持ちになります。私の(そして弊社の)ミッションは,『レジリエンスの高い人々,ポジティビティ溢れる繁栄型組織を育て,双方の持続的成長にコミットする』ことですが,私はポジティブシンキングの伝道師ではないですから。

では,ポジティブ心理学とポジティブシンキングって何が違うのでしょうか?

私は,ざっくり,「科学的証拠(エビデンス)の有無」と,「ネガティビティの扱い方」の2つと考えています。

科学的証拠の有無

ポジティブ心理学は,1998年に提唱された心理学の新たな潮流ですので,れっきとしたサイエンスとしての心理学の一分野です。つまり科学なのです。ポジティブ心理学をベースにしたさまざまなワーク,心理テスト,アセスメント,トレーニングプログラムは,膨大な人と時間を費やして調査された実証データに基づいて開発されています。私どもが提供するレジリエンス・トレーニングプログラムも,ポジティブ心理学,レジリエンス研究,PTG研究,行動認知療法のエビデンスをベースにして開発されています。
一方,ポジティブシンキングとは,各々個人が,自分自身の経験や判断をもとに自分の(ポジティブな)価値観や信念を主張・提唱するものです。したがって,個々人の考え方ですので,ベースに根拠がある場合と単なる思い付きの場合があります。根拠がある場合も,個人の経験則の場合がほとんどで,科学的に実証された結果には及びません。

まとめますと,ポジティブ心理学は科学という学問で,ポジティブシンキングは根拠に乏しい個人の考え方と言い換えることができると思います。

ブログが長くなったので,もう1つの違い「ネガティビティの捉え方」の説明は,次回のブログに続けます。

2015.5.18

レジリエンスは超一流の成功者の必須要因

先日,ビジネスコーチの学友のグループの好意で,関西の勉強会に招かれ,レジリエンスの講義をさせていただきました。ビジネスコーチの資格を持っている方やプロフェッショナルで活躍されている方が多く,それぞれが,人や組織を生き生きと活性化させたいという共通の志を持っているので,大変熱心に聴いていただき,気持ちよく講義をすることができました。

レジリエンスは超一流の成功者の必須要因

講義の中で,レジリエンスの強い著名人やスポーツアスリートの例を挙げ,「レジリエンスは超一流の成功者の必須要因」ですと紹介すると,数名の方に響いたのか,いろいろなところで取り上げていただいています。嬉しいですね。

自分でも,講義のためのパワーポイントの資料をつくっていて,大記録を達成したり,人々を感動させた超一流のスポーツアスリートや,世界を驚嘆させたイノベーションや大発明を起こした科学者や経営者は,例外なくレジリエンスがとても強いことを再認識しました。成功したからレジリエンスが強くなったのではなく,レジリエンスが人一倍強いからこそ成功したのだと判断しています。

ポジティブ心理学では,よく「成功したから幸福なのではなく,幸福だからこそ成功する」と言われます。幸福度が高いほどレジリエンスも強化されますので,前の言葉は,「成功したからレジリエンスが強いのではなく,レジリエンスが強いからこそ成功する」と言い換えることができると思います。これは真理だと思います。

ストレングスカードの効果

講義では,レジリエンス・トレーニングの一部を体験してもらうため,ストレングスカードを用いた自己の強みの確認と活用を検討するワークをしていただきました。50枚のストレングスカードを並べると,強みというものが50種類もあるのかと視覚的に理解でき,驚いたとの声をいただき,とても好評でした。

関西all勉強会

自分のライフワークとして選んだ仕事が充実した素晴らしいものと実感できた一日でした。関西のビジネスコーチの学友の皆様,本当にありがとうございました。感謝感謝でございます。

2015.5.14

離職率を減少させる方法⑥-入社前研修でのビジョンの共有

最近,パソコンの調子が悪く,仕事もはかどらず,ブログも書けず,フラストレーションがたまる日々が続いています。感情のコントロールが難しい,レジリエンスが試される期間ですね。

入社前研修で重要なこと

最近の多くの企業では,内定者の人材マネジメントとして,配属面談,入社前メンター制度などのプログラムを実施しているところが多く,内定期間中に実施される入社前研修も広く普及されているようですね。私が入社前の内定者の頃は,バブルのまっ盛りなので,内定者研修と言えば,派手にお金を使い,アゴアシ付きで飲み食いさせてとにかく内定を取り消さないようにすることだけが目的の,研修とは名ばかりの宴会・懇親会でしたが,最近は違いますね。

最近の入社前研修は,楽しい宴会の雰囲気は薄くなり,しっかり教育・研修をしています。その中身は,資格取得支援,e-ラーニング,通信教育,課題レポートの提出,合宿研修,現場・店舗見学,現場実習などです。入社前から入社後即戦力になるようけっこう鍛えてようとしていますね。研修を行う側の企業の目的としては,内定期間の不安解消やモチベーションの中だるみ防止,他社に関心がいかないようにするための囲い込み,入社後の能力・スキルのばらつき防止などだそうです。
おそらく最後の囲い込みや能力・スキルのばらつき防止が主な目的ではないかと思います。早々と離職されるよりは先手を打って入社直後からしっかり働かせて費やしたコストの元をとってやろうぐらいしか思っていないんでしょうね。だったらコストのかかる入社前研修などやめてしまえば良いのに。日本の企業は未だに人は現場にでないと育たないとして計画的戦略的な人材育成が苦手なんだなあと研修の情報を調べてて痛感しました。

内定時には経営理念やビジョン・ミッションを共有させれば

入社前に現場実習を経験させて成功体験をつめば自信につながるとは思いますが,強烈な失敗をしてそれをケアするような研修をしなければ,かえって逆効果で入社前から自信を失い,無力感・敗北感などのネガティブ感情が蓄積し,離職につながります。

なぜ,企業は,入社前に役に立つかどうだかわからないけど学生が望むような資格取得支援をしたり,即戦力やスキルアップにはつながるかもしれないが自信を喪失させるかもしれない現場実習に拘るのでしょうか?そんなことをするよりも,企業の経営理念とかビジョンとかミッションとかクレドを共有するような取り組みをした方が良いように思います。それも打ち解けたポジティブな雰囲気で。内定しているとはいえまだ社員ではないので,がっつり「我が社のビジョンとは何か」なんてテーマでディスカッションすると内定者も引いてしまうけど,のんびりワークや遊びを入れてビジョンとかミッションの共有をすれば,内定者どうしの結束も高まって個々人のレジリエンスも強化され,会社への貢献意欲も高まり,組織レジリエンスも強化され,結果,離職率も減少するのに。

実は,持続的に繁栄している企業,エクセレントカンパニーは,このような入社前に企業のビジョン・ミッションを共有するようなプログラムを実行しています。だからこそ,社員が生き生きと働き,従業員幸福度も顧客満足度も高く,成長していけるのでしょう。

経営理念・ビジョン・ミッションの共有を行っていない企業は,察するに,「①ビジョンの共有なんて重要でない」と思っているか,「②ビジョンなんて対外的なものなのだから社員に共有させる必要はない」と思っているか,「③そもそもビジョンを明確化していない」のいずれかでしょう。

③のビジョンが明確化されていない企業は,悲しいですね。そのような企業は,企業のトップのキャラクターや価値観・世界観がビジョンになり経営理念になります。トップの人格が素晴らしければ良いんですが,ビジョンを明確化していない企業のトップの世界観・価値観は,どことなく社会に対する後ろめたい背徳感が感じられる場合が多いです(だからビジョンを明かさないのかも)。少なからずさまざまなタイプの企業と,その企業のトップと接してきた私の実感です。