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2016.2.26

レジリエンスはストレスを受け入れ力に変える-ケリー・マクゴニガルの最新刊に学ぶ

皆様、こんにちは。

レジリエンス研修講師,ポジティブ心理学コーチの松岡孝敬です。

今回のブログは,最近読んだケリー・マクゴニガルさんの最新刊、

スタンフォードのストレスを力に変える教科書」(原題“The Upside of Stress ”)

の書評です。

ケリー・マクゴニカル最新刊

書名からはわかりずらいですが,これは紛れもなくレジリエンスの教科書ですね。

いままで習得したレジリエンストレーニングのプログラムとは異なるワークや

エビデンスがけっこう多くあり,とても勉強になりました。

興味深かったのは,ストレス・パラドクスの件。

1998年からアメリカで3万人の成人を対象にした調査で、「この1年間でどのくらい

ストレスを感じたか?」また,「ストレスは健康に悪いと思うか?」という

2つの質問をし,8年後,3万人の参加者のうち,誰がなくなったかを追跡調査しました。

その結果、強度のストレスがある場合は,死亡リスクが43%も高まりました。

ただし,死亡リスクが高まったのは,2つめの質問で「ストレスは健康に悪い」

と思った方だけだったのです。

つまり,「ストレスは健康に悪い」と思わない人は死亡リスクが高まることなく

健康に過ごしているということですね。

他にもコロンビア大学ビジネススクール行動研究所の実験例が記されており,

学生に2種類のビデオ映像を見せたのちに模擬就職面接を受けさせ,

その後,学生の唾液を採取し,コルチゾールデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)という

2つのストレスホルモンの量を測定しました。

コルチゾールとDHEAの量比はストレス反応の「成長指数」と呼ばれ,

これによってそのときのレジリエンス度を測定できるようです。

知らなかった。そんなスケールがあったなんて。

DHEAの量が多いと成長指数,レジリエンス度が高く,

コルチゾールの量が多いと,その逆になります。

さて,模擬就職面接前に見せられた2種類のビデオ,2つのグループに分けて

それぞれ1種類別々のビデオを見せられています。

そのうち,1種類は,「ほとんどの人はストレスは悪いものと考えています。

ところが,研究結果によって,ストレスには良い効果があることがわかっています。」

というストレスのポジティブな(upsideな)面を強調した3分間の映像。

もう1種類は,「ストレスが健康に悪いことは多くの人が知っています。

ところが,研究によって,ストレスは私たちが予想している以上に心身を消耗される

ことが明らかになったのです。」というストレスのネガティブな面を強調した映像。

2つのグループの成長指数,レジリエンス度の結果は,もうおわかりですよね?

ストレスのポジティブな面を強調されたグループはレジリエンス度が高く,

ネガティブな面を強調されたグループは,レジリエンス度が低い結果となりました。

ストレスに対する思い込み,認知を変えることでレジリエンス度が変わる

ユニークなデータですね。

この本には,それ以外にもレジリエンスに関する新たな知見・エビデンス・

エクササイズが豊富に記載されており,今までの自分のレジリエンス研修プログラムを

補完したりブラッシュアップできたりする情報が満載でした。

じっくり再読しよう。そして次回の研修のコンテンツはかなり修正を施さねば…

なかなか凄い心理学者ですね。ケリー・マクゴニガル

一度お会いしてお話しを伺いたいです。美人だし。(それは関係ないか…。)

それにしても,“The Upside of Stress”の邦題が,何故,

「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」になるんだろ?

考えるとストレスが溜まってしまう(泣)。

ケリー・マクゴニガル先生にセラピーしてもらいたい。

2016.2.23

ハッピー大作戦!-レジリエントな異端児指導者が組織レジリエンスを創る

皆様,こんにちは。

レジリエンス研修講師,ポジティブ心理学コーチの松岡孝敬です。

昨日,2月22日,広島県中小企業家同友会の例会があり,

会員として出席させていただきました。

その会では,青山学院大学陸上部監督の原晋氏をお招きし,講演会が開かれました。

原監督の指導法は,ポジティブ心理学コーチングポジティブ組織論

コンサルティングに通じる試みがあり,とても興味深く拝聴しました。

原監督1

ご存知の方も多いですが,原氏は,今年の箱根駅伝で青山学院を一度もトップを

譲ることなく完全優勝で2連覇に導いた,今や時の人となった陸上界の異端児です。

お話を聞いていると,とてもレジリエンスの強い方だなあと感じました。

中京大学陸上部を経て地元,中国電力陸上部の1期生として入社するも,

27歳で故障し,事実上のクビを宣告され,一から関連会社の営業として

左遷同然で流され,そこで抜群の営業成績を残して、社内ベンチャー企業のメンバーに

抜擢されてそこでも結果を残すことになります。強烈なレジリエンス,負けじ魂ですね。

それで終わることなく,高校時代の後輩からの話で,低迷していた青山学院大学陸上部の

再建のため,監督就任のオファーが入ります。

一度は忘れかけていた陸上への情熱がふつふつと沸き起こり,

当初は大学の嘱託職員扱いという極めて低い条件の身分で,

家族の反対を強引に説得し,退路を断って青山学院陸上部の監督に就任します。

当然のごとく,順風満帆なチームづくりとはいかず,当初はさまざまな困難・

試練に会いますが,10年計画で戦略的にチームをつくっていき,

2015年大学駅伝2冠,箱根駅伝2連覇と輝かしい業績を立てられました。

最近,講演があると,話を聞きながら演者の“強みスポッティング”をするのが

癖になっているのですが,原氏のお話からは,「忍耐力」,「計画性」,「勇気」,

情熱」,「大局観」といった強み(キャラクターストレングス)が感じられました。

指導法もユニークで,「ハッピー大作戦」と称して,選手の幸福度(ハッピー指数)を

自己申告させて,選手のモチベーション,ポジティビティを上げたり,

「コカ・コーラ大作戦」と称して,選手の力を120%引き上げるような試みをしたりと,

まさにポジティブ心理学ベースの介入法,ポジティブ心理学コーチングと感じました。

原監督2

自らを「ファーストペンギン」に例える陸上界の異端児は,まさにポジティブ組織論

でいう,“ポジティブな逸脱”(Positive Deviance)をしている方。

そして,そんなポジティブな逸脱者は,選手の自主性を重んじ,

ポジティブな組織文化を醸成し,コカ・コーラから炭酸が一気に噴き出すごとく,

選手のパフォーマンスを一気に最高潮に高めます。

残念なのは,日本の教育界,企業文化が,こんなポジティブな逸脱者,

異端児を育成するような社会になっていないことです。

私は,微力ながら自分のコンサルティングやレジリエンストレーニングで,

そのような文化を変えていきたいと思っています。ていうか変えます。

2016.1.31

ふとした日常の感謝‐ポジティビティが高まったとき

皆様,こんにちは。

株式会社ポジティビティ代表

レジリエンス研修講師ポジティブ心理学コーチ松岡孝敬です。

ポジティブ感情のうち,とりわけ感謝の感情が高まると,

幸福度が高まる

ネガティブ感情を中和させる

身体の健康につながる

思いやりが生まれる

などの効果が高まります。当然レジリエンスも強化されます。

先日,とある外資系倉庫型スーパーでグ〇コのゼッピンカレーの特売がある

との情報をキャッチした私のカミサンが,

その日は,仕事で自分が買いに行けないので,

私に「買ってきて」と御遣いを頼まれたのでした。

ゼッピンカレー

朝からコンテンツ制作などで時間が取れなかった私は,午後からでも良いかと伺うと,

「午前中に売り切れたらどうするのよ!人気商品なんだから!

ブログでも評判なんだから!」

コ〇△コ関連のブログを豆にチェックしているカミサンは,

狙った特売品は妥協することなくゲットする人だったのでした。

レジリエンスの強い人だこと。

(何で俺がカレーごときの御遣いに朝一番でコ〇△コに行かなきゃいけないんだ??)

と内心いらつき,ネガティビティが高まりながらも、朝一番で買い物に出かけたのでした。

店につくや,わき目もふらず,随所にある試食コーナーに目もくれず,

ゼッピンカレーの売り場に一直線に向かった私でした。

売り切れが予想されるほど人が群がっているかと思いきや,余裕でゲットし,

しかも棚には,およそ売り切れなど起こらないだろうほどの商品が山積みされたのでした。

(朝イチに来なくったって,午後から来ても間に合ったじゃない)と

あきれた気持ちが湧いたのは言うまでもありません。

翌日,今度は2人で店に買い物に行くと,

まだゼッピンカレーは棚に燦然と置いてあるではありませんか。

「ほら見ろ,急いで買わなくったって,売り切れずにまだあるじゃないか」と言ってから,

2人で値札を見ると,昨日買った値段よりも300円も高くなっていたではないですか。

私のことを滅多にほめないカミサンは,その値札を見て,嬉々として

「あなた,でかした!!」

と,仕事で大型契約を受注したかのような喜び方をし,

かなりの感謝の気持ちを表されたのでした。

(あれっ?こんなんで良いの。)などど拍子抜けつつ,

日常のふとした感謝gratitude)に,極めて気を良くして

ポジティビティが高まった私でした。

日常のひょんな,小さな感謝を確認して積み上げていくと,

ネガティビティが解消され,レジリエンスが高まりますね。

ちなみにゼッピンカレーは,ネットでは美味しいと評価の高い商品のようで,

ちょっとFABE分析してみると,

F(feature;特徴)は,
「特製フォンとデュクセルソースにこだわったコクと40数種のスパイスを使用したルウ」

A(advantage;優位性)は,「ペーストと固形ルウの2層構造」

B(benefit;便益)は,「高級レストランの上品なこだわりカレーを家庭で味わえる」

E(evidence;証拠)は,わからなかった…。

というところでしょうか?

感謝してくれたついでに,ゼッピンカレーのルウを使って作る夕飯も感謝してほしい。

私は褒められて伸び,レジリエンスが高まるので…

2016.1.16

コーチングの新結合(イノベーション)-ダイバーシティがイノベーションとレジリエンスを生む

皆様,こんにちは。

レジリエンス研修講師,ポジティブ心理学コーチの松岡孝敬です。

新年初めてのブログでございます。遅ればせながら,本年もよろしくお願い申し上げます。

今日は午後から,コーチング仲間と勉強会を行いました。

コーチング未経験者,初心者も参加されているため,前半はコーチングの基礎として,

基本スキルとその理論的裏付けについて,私がレクチャーを行いました。

中国コーチング勉強会20160116

この勉強会,「中国コーチング勉強会」と名付けられていますが,

参加者各々ベースとなるスキルが多様で,

PHP認定のコーチ資格保有者,

NLPトレーナー(ジョン・グリンダーからも指導を受けた本格派),

マインドブロックバスターインストラクター,

そして私,レジリエンストレーナー&ポジティブ心理学コーチ。

「中国コーチング勉強会」のミッションの1つに,独創的な中国コーチングスタイルを

創造するというものがあるのですが,これだけリソースが豊富で,

多様性が高いとイノベーティブなコーチングスタイルが創れると確信しました。

イノベーションを名づけたシュンペーターは,イノベーションを「新結合」

と表現しましたが,まさに,今日のコーチング勉強会は,

コーチングの新結合(イノベーション)でしたね。

ダイバーシティと発想の転換こそがイノベーションを生み,

レジリエンスを強化すると思います。

今年もワクワクとした楽しい時間を過ごすことができそうです。

2015.12.17

親子で克服した逆境,その後のPTG-スターウォーズとレジリエンス・トレーニング第6回

皆様,こんにちは。

レジリエンス研修講師,ポジティブ心理学コーチの松岡孝敬です。

今回のブログは,「スターウォーズ エピソード6 ジェダイの帰還」を題材に,スターウォーズとレジリエンス・トレーニング第6弾をお送りします。今回がシリーズ最終回です。

エピソード6は,ジェダイの騎士となったルークとダースベイダーの宿命の対決と,銀河帝国皇帝との最終対決が描かれています。

ここでアナキン・スカイウォーカーとルーク・スカイウォーカーとの幼少期の環境を比較してみます。

アナキンは,なんとお父さんは存在せず,お母さんのシミ・スカイウォーカーが単独で妊娠し,出産した子供です。聖母マリアのような処女懐胎か,意図的にどこからかの受精卵をお母さんに移植したのか(代理母)? ファンの間ではいろいろな説があります(ミディ=クロリアンによる受胎説?)が,ともかく,幼少期,アナキンはシミという優しいお母さんのみに育てられました。シングルマザー家庭ですね。

お母さんは心優しい女性ですが,アナキンの置かれている環境は最悪で,まず銀河のならず者が集まる砂漠の惑星タトウィーンに生まれ,奴隷としてガラクタ市の商人でギャンブル好きのワトーの店で働かされます。それでも,ポッドレーサーの腕前は相当なものですし,機械修理の腕前も確かだったので,最悪の環境でも自分の技術と能力に自信をもって生きていたようですね。

一方のルークは,両親は不在ですが,水分抽出農場を営む叔父オーウェン,叔母ベルーのラーズ夫妻の元で育てられました。ラーズ夫妻は,ジェダイ時代のアナキンを知っているし,タスケンレイダーを虐殺したことも暗黒面に堕ちてダースベイダーになり果てたことも知っているので,ルークを愛情をもって育てつつ,アナキンのようにはならないようにして,ジェダイやフォースのことなどは知らせないように慎重に育てたのでしょうね。あまりネガティビティを感じさせない,優しい人間に。

自らは奴隷という身で父親もなく,周囲は邪悪な考えしかもっていないようなならず者ばかりの中で常に緊張して生き延びなければならないアナキン。かたや農場を営む平凡な夫妻のもとで,さほど緊張を強いられず育てられたルーク。

ソーシャルネットワークの深さとポジティブ感情の量は,当然,ルークの方が高いと思われます。幼少期の頃からダークサイドに陥りやすさからすれば,アナキンの方が高く,ルークは容易にダークサイドには陥らない要素が備わっているように感じます。

さて,エピソード6の最大の山場,ルークとダースベイダーの宿命の最終対決,親子対決に話を移します。

ルークとダースベイダー

ダースベイダーの元へ投降したルークは,ダースベイダーを「父さん」と呼び,敢えて対決せずに言葉で説得しようと試みます。それは父の心にまだ善の心が残っていることを信じていたからと,父であるダースベイダーを倒すと,自分さえも暗黒面に陥ってしまうと思ったからでしょう。

銀河帝国の暗黒皇帝と対峙したルークは,皇帝の罠によって反乱同盟軍が攻撃され窮地にさらされている場面を目の当たりにします。皇帝の巧みな話術にはまり,憎悪をもってライトセーバーを取り,皇帝に襲い掛かりますが,ダースベイダーに妨げられ,図らずも宿命の親子対決が始まります。

エピソード5では,ダースベイダーにまったく歯が立たなかったルークですが,今回の対決では互角の戦いを見せます。さらに,妹レーアの存在を悟られ,レーアさえも暗黒面に陥れようと考えたダースベイダーに対して,怒りをもって激しい攻撃を加え,ダースベイダーの腕を切り落としてしまいます。

いくらルークの腕が上がったとはいえ,銀河系最強のダースベイダーがあっけなく腕を切り落とされたのは,まず,ダースベイダーの善の心(ブライトサイド)が大きくなってダークサイドのパワーが発揮できなくなったことと,ルークがこの時点でダークサイドに堕ち掛け,そのパワーでダースベイダーを圧倒したからではないかと想像します。

ダースベイダーを倒し,ルークが怒りや憎悪といったネガティブ感情に包まれているのを好機とみた暗黒皇帝は,ルークにダースベイダーのとどめを刺し,自分の弟子になってダークサイドに来ることを誘います。でもルークは,毅然と拒みます。「自分はジェダイだ。かつて父がそうであったように」と。

このシーンは,エピソード3の冒頭で,パルパティーン議長(暗黒皇帝)に促されるまま,怒りをもってドゥークゥー伯爵を殺したアナキンと対照的ですね。アナキンはダークサイドに堕ちたが,ルークはジェダイとしてとどまった瞬間です。

その後,暗黒皇帝から攻撃を受け,みるみる衰弱していくルークは,ダースベイダーのブライトサイドを信じ,必死にベイダーの良心に叫びます。「助けて父さん」と。その姿を見て,ベイダーのかすかに残っていたブライトサイドが復活し,善の魂が蘇り,自分の生命維持装置が破壊されるのを顧みず,暗黒皇帝を反応炉に投げ入れ葬り去ります。ダースベイダーがジェダイに,アナキンに戻った瞬間ですね。同時にこれは,暗黒面の呪縛という逆境をアナキンが克服した瞬間でもあります。

ルークは,フォースというかポジティビティというか,自らの力によって,父の暗黒面の呪縛,親子の宿命,ジェダイの復活,フォースのバランスといったさまざまな逆境を克服したことになります。親子で逆境・試練を克服したというか…。これによって,ルークのジェダイの騎士としての修行,レジリエンス・トレーニングは完結します。

そして,アナキンとルークの親子は,互いにPTG(ポストトラウマテッィクグロース,逆境後の成長)を表し,映画はラストを迎えます。

アナキン最後

こうして改めてスターウォーズ全シリーズのストーリーをレジリエンス・トレーニングと重ね合わせて見直すと,結構よくできた人間ドラマですね。

明日から公開のエピソード7も楽しみにして鑑賞することにします。