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2015.6.22

生きているだけで幸せ‐中立進化説が導くレジエンス

チャールズ・ダーウィンの進化論「自然選択説(自然淘汰説)」はあまりにも有名ですよね。

環境に適応した形質をもつものが生き残って進化するという,適者生存の理論です。よくビジネスの世界でもこの理論は引用されてて,環境に適応するように変化しなければビジネスパーソンも企業も生き残れない,淘汰されるなんて喩えられていますよね。

適者生存は、「サバイバル オブ ザ フィッテスト」といいます。

自然選択説に対して、非常にユニークな進化論を提唱した日本人の分子遺伝学者がいました。木村資生氏です。

彼の進化論は、「中立進化説」といいます。この説は,今では定説として通っています。

分子レベルの遺伝子の変化(DNAを構成する塩基配列の1つが変わる突然変異)は,実は大部分は表現型(外面に現れる形質のこと)として現れず,生存に有利でも不利でもない中立的なものなのです。その中立的な突然変異をした遺伝子が集団に拡散するのは,全くの偶然のなせるわざで,これを学術用語では「遺伝的浮動」といいます。

中立的な突然変異が偶然,集団に拡散し,集団内の遺伝的多様性が増し,中立的な突然変異からさらに偶然,表現型に現れる遺伝子に変異し,それが環境に適応すれば淘汰されずに残る。つまり,自然淘汰は,進化の決定要因ではありますが,進化をドライブする原動力は,突然変異遺伝的浮動。要するに,“偶然”,“たまたま”なのでした。

木村資生氏は,この偶然のなせるわざを,「サバイバル オブ ザ ラッキィスト」(幸運なものが生き残る)と表現しています。

要するに,私たち,ヒト(ホモ・サピエンス)という種が存在するのは幸運のなせるわざで,ヒトという種が進化して現れなければ,当然,私たちはこの世にいないわけですね。本当にラッキーだから今,生きている。そう考えると生きているだけで幸運で幸せっていう考え方は理にかなっていると思いませんか?

ヒトという種を生み出した偶然,遺伝的浮動に感謝せずにはいられません。このような生命の進化の歴史レベルの壮大な時間軸に感謝をすると,レジリエンスが思いっきり強化される気持ちになります。

さらに,男女が出会って恋愛関係になる確率は,とある情報では7200兆分の1だとか(←ホンマかいな?)。そんなことを考えると,私たちがこの世に生を受けるなんて奇跡に近いですよね。

昨夜,プチ同窓会で,同級生の小さなご子息と会話しながら,ふと,木村資生さんの「サバイバル オブ ザ ラッキィスト」が思い浮かんだのでした。ちょっと生物的な話ですみません。元生物教科書編集者なので…。次回はやわらかいブログに戻ります。

2015.6.16

科学は仮説や!‐レジリエンスが試される科学的事実の見直し

先日,バラエティ番組を観てるとおやっと思うことがありました。

活性酸素の除去や老化の抑制などに関連し,長寿遺伝子と呼ばれていたサーチュイン遺伝子ですが,寿命延長には機能していないという研究結果が報告されたとのこと。それももう4年前の2011年9月にロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ健康加齢研究所のデービッド・ジェムズ氏率いるチームによって「Nature」誌で発表されており,しかも,サーチュイン遺伝子の長寿効果を最初に発表したマサチューセッツ工科大学(MIT)のレオナード・ガランテ氏も,「Nature」誌で実験的な不備を認めたとのこと。

教科書編集者時代にとある老教授がおっしゃった教訓を思い出します。

「科学は仮説や!」と。

一見して定説で真理と思われた理論なり現象も,深く研究すると,定説ではなくなってしまう。生命現象を紐解く理論には,現段階で定説は極めて少ないのかもしれません。

心理学も同様ですね。例を挙げると,フロイトの夢判断や理論などは,発表当時は定説だったかもしれませんが,現代では,理論の誤謬や矛盾が指摘されてて,必ずしも定説とは言い切れないように感じます。

それでいて,科学は全くあてにならないといった「反科学主義」的な暴論には陥らないようにしよう。常に科学的な見方を保ち,検証過程に目を光らせなければならないという教訓を得たと肯定的に今の状況をみたいと思います。

レジリエンス・トレーニングもポジティブ心理学などの科学的証拠をベースにしていますが,それらのエビデンスも本当に真理なのか常に検証しなければなりませんし,新たな知見が発表されれば,それを取り入れたプログラムも開発しなければなりません。

前述したサーチュイン遺伝子について,長寿効果は否定されていますが,マウスなどの哺乳類を,高脂肪の食事や加齢関連の疾病による代謝ダメージから守る効果があるとは報告されています。

それにしても,赤ワインに多く含まれているポリフェノールの一種であるレスベラトロールは,サーチュイン遺伝子を活性化する作用があるといわれていたのですが,サーチュイン遺伝子に長寿効果がないとなると,赤ワインを多量に飲んでも長生きはできないことになります。当然といえば当然ですが…。
赤ワイン

どうしよう。長生きできると思ってあんなに赤ワインを好きでガブガブ飲んでいたのに(←嘘)。もう赤ワインは卒業しようかな。

嘘です。死ぬまで飲み続けます。

2015.6.12

Dr.倫太郎で思うこと‐レジリエンスの重要性

最近、うちのカミサンがはまっているTVドラマがあります。「Dr.倫太郎」です。毎週水曜日は、2人で楽しく観ています。堺雅人さんは芸域の幅が広いですね~。私は倫太郎よりも古美門研介弁護士の方が好きですが。

Dr.倫太郎

このドラマで蒼井優さん演じる新橋の売れっ子芸者、夢乃を苦しめているのが「解離性同一性障害」という精神疾患です。解離性同一症が正式な名称とか。

先日、ビジネススクールの後輩で、現役の精神科医の友人と飲んでいたとき、「Dr.倫太郎」の話題を彼にふりました。日本では解離性同一症の症例は非常に少ないそうです。その友人も長く精神科医として患者と向き合っているが、解離性同一症の患者を診たことはないし、その友人の同僚の医師も、解離性同一症の患者を診た経験は非常に少ないそうです。催眠療法が盛んで、さまざまなタイプのストレスが多いアメリカで多い症例ですね。

解離を引き起こすストレス要因は、①学校や兄弟間のいじめ、②親が子供を強圧的に支配するような親子の人間関係、③ネグレクト、④家族や周囲からの児童虐待、⑤殺傷事件や交通事故などをまじかに見た強烈なショックや家族の死の5つあるそうです。アメリカの解離性同一症の要因で多いものは④の児童虐待で、日本の場合は、①の学校や兄弟間のいじめや②の親子の人間関係だそうです。「Dr.倫太郎」の夢乃が解離した要因は、②と③のネグレクトでしょうか?

解離性同一症は、5つのストレス要因が引き金となりますが、もともと心に解離する傾向をもつ児童が発症しやすいそうです。その資質は、「解離の資質」といいます。

「解離の資質」は。「脆弱性(vulnerability)」と言い換えることができます。「脆弱性(vulnerability)」の反対の概念が「レジリエンス(resilience)」です。

解離性同一症の研究結果として興味深いのは、目に見える性格の特徴を「脆弱因子」と「レジリエンス因子」に分けると、「レジリンス因子」は「脆弱因子」のネガにはならないということです。「脆弱因子」があったとしても、それを超える十分な「レジリエンス因子」があれば、解離性同一症にはなりにくいし、PTSD(心的外傷後ストレス障害)もなりにくいという研究結果が出ています。「脆弱因子」の中には、信じやすい心や空想傾向も含まれていると思いますので、「脆弱因子」をすべてなくすと、創造性にかける子供が出てくるような気がしますね。「脆弱因子」を少なくすることよりも、「レジリエンス因子」を思いっきり増やせばよいのです。「レジリエンス因子」には、「自尊感情」、「安定した愛着」、「ユーモアのセンス」、「楽観主義」、「支持的な人がそばにいてくれること」などが含まれます。

レジリエンスを強化することが、若年層でも重要だという証左ですね。

ところで精神科医の後輩に、「蒼井優さんのような綺麗な患者さんが来院して、恋に落ちることはあるの?」と質問すると、そんなことはないとの回答でした。そりゃそうでしょうね。後輩は倫理観の強いドクターだったのでした。

2015.6.10

愛におぼれていますか?‐愛情あふれる言い訳

新しいPCにまだ慣れず,ブログを書くのをおろそかにしがちです。今は,東京の某ビジネスラウンジで書いています。

6月8日放送のNHK連ドラ「まれ」で興味深いシーンとセリフがありました。土屋太鳳さん演じるまれが一流パテシィエに至る自分の将来の予定表(ビジョンロードマップ)を示して夢を語っていると,小日向文世さん演じる天才パテシィエ池畑大悟から一喝されるシーンです。

池畑大悟曰く,「そんなくだらないものは捨てろ。バレンタインまでに愛におぼれろ!愛を知らない奴が美味い菓子をつくれるか!」

おぼれるほど愛を知らなくてもよいと思いますけど,後半の「愛を知らない奴が美味い菓子をつくれるか!」は賛成できますね。

ポジティブ心理学者のバーバラ・フレデリクソン博士は,ポジティブ感情のうち,「愛」が最も重要だと主張していますね。ポジティブ感情の最上位にある感情だと言っており,「愛」,「感謝」,「喜び」,「畏敬」などの他のポジティブ感情を生み出すとも言っています。「愛情」が豊かなほど,当然レジリエンスも強くなります。愛する人を思い出せば,心も折れたりせず,再起できますよね。

皆さんは,愛情を抱いて生きていますか? 両親や夫,妻,恋人,パートナー,兄弟姉妹,子供に愛情を注いでいますか?別に対象は人でなくてもかまいません。飼っている愛犬だったり,仕事であったり,好きな土地・故郷であったり,絵画であったり…。何一つ愛情を抱けない人は,本当にお気の毒だなあと感じます。そんな人はほとんどいないと思いますが。日本人は,ストレートな愛情表現が苦手ですよね。(私は違います。日本人離れしているのか?)

「自分を愛せない人は,他人を愛することなどできない。」ということわざがあります。皆さんは,ありのままの自分を愛していますか?ありのままの自分を愛せない人は,ことわざ通り,他人や対象物に本当の愛情を注ぐことは難しいでしょうね。

(自己愛パーソナリティー障害という精神疾患があるので,自己愛も過ぎると良くないんじゃないの?って思われるかもしれませんが,自己愛パーソナリティー障害やナルシズムの自己愛は,ありのままの自己を無視して虚像の自己を愛していると思います。)

かくいう私は,偉そうに「愛」を論じられるような立場ではなかったのでした。

今日は,私が最も愛情を注ぐべき最愛の方の誕生日なのです。本来ならバースデーパーティーを開かなければならないところ,東京出張中でかなわず。先方が怒ってなければ,金曜日の夜に2日遅れのバースデーディナーで赦しを請おう。愛情をいっぱい注いで。愛とワインに溺れる日々を過ごそう。先方が拒否しなければの話ですが…。

今日のブログは,大層に「愛」を語っている場合かっていうオチでした。いやはや愛は奥深い。

2015.6.6

魔法の言葉をもっていますか?-失敗への対処法

西日本は,梅雨入りしての初の週末になりますが,皆様,いかがお過ごしでしょうか?広島は梅雨らしからぬ快晴で,窓外の景色も清々しい朝を迎えています。

昨日のテレビを見ていると,元テニスプレイヤーの松岡修造さんが出ていて,彼の半生が描かれていました。非常に熱い人ですね~。同じ苗字なので親近感を覚えます。大学院時代,テニスをしていたときの私のあだ名も「修造」でした。もっともテニスが上手くてついたあだ名では決してなく,単に苗字が一緒なだけでついたものです。テニスコートでは,よく「修造のくせにそんなボールも拾えないのか!」とか「修造なのに何でそんなにサーブが遅くて入らないの!?」とか言われました。かなり皮肉のこもったあだ名でしたね。

その修造さんの語録が記された日めくりカレンダーが相当売れているそうですね。他人事だけど嬉しくなります。

修造語録で気に入っているのが,「失敗したときこそガッツポーズ」です。彼らしい彼ならではの失敗の対処法ですね。日本人は,失敗の対処法が苦手というか下手というか,学校教育のころから,失敗は悪とする風潮がありますね。言霊の国なので,「失敗」という言葉を言ったり書いたりすると,本当に失敗すると考えられるところがあるので,できるだけ事が起こる前に失敗とか言わないんですけど,さすが若い頃から単身ワールドツアーを回っていた修造さんならではの考え方だなあと思いました。

皆様は,失敗したとき,それに対処する“魔法の言葉”を持っていますか?

レジリエンスの強い人は,それぞれ独自の言葉を持っていて,失敗に対処し,ネガティブ感情を抑え,ポジティブ感情を高めるコツをもっているようです。

たとえば,前のブログで取り上げたネクシィーズの近藤太香巳社長は,失敗に接し苦境に立ったとき,別の近藤社長が心の中で,「ウソウソ」とささやくそうです。別の人格がアドバイスするところがポイントですね。本当の人格は,ちゃんと失敗から逃げずに現実として受け止めているところが重要なポイントと思います。

次に,植松電機の専務,植松勉さんの魔法の言葉。何か失敗すると,「うぉ~! そうきたか~!」と明るく嘆いて,「だったら,こうしてみたら。」とポジティブに転換するそうです。この場合も,失敗を誤魔化そうとせず,しっかり受け止めたのちにポジティブな方向に転換するところが素晴らしいですね。自然にレジリエンス・トレーニングをしているようです。

「うぉ~! そうきたか~!」と「だったら,こうしてみたら。」は,最近気に入って落ち込んだときによく使いますが,自分自身の魔法の言葉はまだ持っていません。

ただ,我が家では,私が何かしら失敗して落胆したときは,カミサンが私に言葉をかけてくれます。

「お・も・い・こ・み。 思い込みよ!」(滝川クリステル風←ちょっと古い)

やはり自分自身で“魔法の言葉”は持たないといけません。